中古マンションの価格乖離率&売却期間

東京カンテイが中古マンションの売出・取引事例に基づく価格乖離率の最新データを公表しました。

中古マンションの価格乖離率&売却期間

首都圏

・2020年下期の価格乖離率は-6.05%、前期から1pt以上も縮小
・新型コロナ禍でも下期の売出・取引価格は上振れ、売却期間は通年で概ね4か月間のまま

中古マンションの価格乖離率&売出→成約までの期間

首都圏 中古マンションの一戸平均価格(売出・取引)

首都圏における2020 年上期での中古マンションの一戸平均価格は、売出価格が3,804 万円(前期比:-0.9%)、取引価格が3,532 万円(同-1.3%)と、ともにマイナスを示していた。売出・取引事例の価格乖離率※は-7.15%で、前期から0.35 ポイント拡大した。
昨春に新型コロナウイルスの感染拡大防止のために発出されていた緊急事態宣言が解除されて以降、中古マンション市場においても取引が本格的に再開されることとなったわけだが、同年の下期における中古マンションの一戸平均価格は、売出価格が3,884 万円(同+2.1%)、取引価格が3,649 万円(同+3.3%)と揃って上昇に転じ、取引価格の上昇率は売出価格に比べて1ポイント以上も上回っていた。売出・取引事例の価格乖離率は-6.05%と前期から1ポイント上も縮小したことで、それらの価格は直近 10 年間において最も漸近する結果となった。需給逼迫によって売出価格が強気に値付けされている中でも、取引価格はそれらの動きに追随している。依然として新型コロナ禍の真っ只中であるが、中古マンション市場においては旺盛な購入ニーズが集まっているものと推察される。
売出→成約までの期間(売却期間)を見てみると、2020 年上期では4.18ヵ月と再び4ヵ月間を超え、下期では 4.15ヵ月と僅かに短くなった程度であり、通年では概ね4ヵ月間のままとなった。

首都圏 中古マンションの価格乖離率および売却期間の推移

売却期間の違いによる価格乖離率とそのシェア

首都圏における 2020 年の価格乖離率を売却期間ごとに見てみると、売却期間が1ヵ月以内での価格乖離率は-2.97%であった。不動産取引における専属専任媒介・専任媒介契約の有効期間である3ヵ月以内での平均は-3.97%となっており、売り出し開始からの3ヵ月間では最初の売出価格から4%程度値下げした金額で成約に至っていたことになる。また、売却期間が 9カ月まで長期化すると、価格乖離率はー10%を超え始める。2019 年の調査結果と比べて、ほとんどの売却期間において価格乖離率がやや縮小している様子が窺える。
売却期間が1ヵ月以内での事例シェアは35.1%(2019年:34.2%)で、全体の1/3以上が売り出し開始から1ヵ月以内で成約に至っていた。また、3ヵ月以内の累計事例シェアは 55.4%(同57.1%)と過半数を占め、売り出し開始から2回目の媒介契約の有効期間が終了するまでには全体の約3/4 に相当する74.0%(同76.7%)のケースで成約に至っていたことになる。

首都圏 中古マンションの価格乖離率および売却期間の推移

次に、売却期間ごとに価格乖離率のシェア構成を見てみると、売却期間が1ヵ月以内の場合に最もシェアが大きかったのは「-5%以内」の 40.8%で、次いで「0%(売出価格から値下げせず成約に至っているケース)」の 34.4%となっている。売却期間が1ヵ月以内の場合でも価格乖離率が-10%を超えるケースはあるものの、それらのシェアは合計で 9.3%と1割にも満たない。一方、売却期間が 10月まで長期化した場合、「-20%超」のシェアは21.9%にも及んでいる。

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中部圏

・2020 年下期の価格乖離率は-7.64%、前期から縮小してコロナ前の水準に
・上期にかけて上昇傾向で推移していた売出・取引価格は反落、売却期間は長期化の様相

中古マンションの価格乖離率&売出→成約までの期間

中部圏 中古マンションの一戸平均価格(売出・取引)

中部圏における 2020 年上期での中古マンションの一戸平均価格は、売出価格が2,578万円(前期比:+2.9%)、取引価格が2,369 万円(同+2.4%)と、ともにプラスを示していた。売出・取引事例の価格乖離率※は-8.11%で、前期から 0.49 ポイント拡大した。
昨春に新型コロナウイルスの感染拡大防止のために発出されていた緊急事態宣言が解除されて以降、中古マンション市場においても取引が本格的に再開されることとなったわけだが、同年の下期における中古マンションの一戸平均価格は、売出価格が 2,434 万円(同-5.6%)、取引価格が2,248万円(同-5.1%)と揃って大きく反落した。
ただし、取引価格の下げは売出価格に比べて小さく、売出・取引事例の価格乖離率は-7.64%と前期から 0.47 ポイント縮小したことで、新型コロナ以前の水準まで戻している。売出→成約までの期間(売却期間)を見てみると、2020 年上期では3.76ヵ月、下期では 4.16 ヵ月と長期化する動きが一段と加速しており、4ヵ月間を超えるのは 2014年以来である。売却期間が長期化する一方で価格乖離率は概ね例年と同水準を示しているわけだが、昨今の中古マンション市場においては売却希望価格に可能な限り近い値段で売れるまで待つことができる所有者も存在しており、幾分か売り手優位の状況にあるものとみられる。

中部圏 中古マンションの価格乖離率および売却期間の推移

売却期間の違いによる価格乖離率とそのシェア

中部圏における2020 年の価格乖離率を売却期間ごとに見てみると、売却期間が1ヵ月以内での価格で離率は-3.86%であった。不動産取引における専属専任媒介・専任媒介契約の有効期間である3ヵ月以内での平均は-5.07%となっており、売り出し開始からの3ヵ月間では最初の売出価格から5%程度値下げした金額で成約に至っていたことになる。また、売却期間が6ヵ月まで長期化すると、価格乖離率は-10%を超え始める。2019年の調査結果と比べて、3ヵ月以内の乖離率は僅かに拡大している様子が確認できる。
売却期間が1ヵ月以内での事例シェアは36.7%(2019年:39.8%)で、全体の1/3以上が売り出し開始から1ヵ月以内で成約に至っていた。また、3ヵ月以内の累計事例シェアは58.2%(同 62.5%)と約6割を占め、売り出し開始から 2 回目の媒介契約の有効期間が終了するまでには全体の3/4以上に相当する75.4%(同78.9%)のケースで成約に至っていたことになる。

次に、売却期間ごとに価格乖離率のシェア構成を見てみると、売却期間が1ヵ月以内の場合に最もシェアが大きかったのは「-5%以内」の37.5%で、次いで「0%(売出価格から値下げせず成約に至っているケース)」の30.6%も30%台で続いている。売却期間が1ヵ月以内の場合でも価格乖離率が-10%を超えるケースはあり、それらの合計シェアは12.1%で他の都市圏よりも大きい。一方、売却期間が7ヵ月まで長期化した場合、「-20%超」のシェアは26.1%にも達しており、それよりも長期間の場合でも概ね20%以上のシェアを有している。

中部圏 売却期間別 価格乖離率シェア(2020年)

近畿圏

・2020年下期の価格乖離率は-7.80%、2期続けて拡大
・売出価格は前年同期を上回るも買い手の追随する動きに鈍さ、売却期間も長期化する傾向に

中古マンションの価格乖離率&売出→成約までの期間

近畿圏における2020年上期での中古マンションの一戸平均価格は、売出価格が 2,761 万円(前期比:-3.3%)、取引価格が 2,551 万円(同-4.5%)と、ともにマイナスを示していた。売出・取引事例の価格乖離率※は-7.61%で、前期から1.20 ポイントも拡大した。
昨春に新型コロナウイルスの感染拡大防止のために発出されていた緊急事態宣言が解除されて以降、中古マンション市場においても取引が本格的に再開されることとなったわけだが、同年の下期における中古マンションの一戸平均価格は、売出価格が 2,858 万円(同+3.5%)、取引価格が2,635 万円(同+3.3%)と揃って上昇に転じた。ただし、取引価格の戻りは売出価格に比べて小さく、売出・取引事例の価格乖離率は-7.80%と前期から 0.19 ポイント拡大したことで、2013 年以降の価格上昇局面においては最も大きい価格乖離率を示す結果となった。
売出→成約までの期間(売却期間)を見てみると、2020 年上期では3.71 ヵ月、下期では 4.47 ヵ月と長期化する動きが一段と加速しており、売却期間自体も過去 10 年間で最も長くなっている。中古マンションに対して旺盛な購入ニーズが集まっている首都圏に比べると、近畿圏においては強気に値付けされた売出価格に対して買い手が追随する動きに依然として鈍さが見られる。

売却期間の違いによる価格乖離率とそのシェア

近畿圏における 2020 年の価格乖離率を売却期間ごとに見てみると、売却期間が1ヵ月以内での価格乖離率はー3.65%であった。不動産取引における専属専任媒介・専任媒介契約の有効期間である3ヵ月以内での平均は-4.79%となっており、売り出し開始からの3ヵ月間では最初の売出価格から5%程度値下げした金額で成約に至っていたことになる。また、売却期間が7ヵ月まで長期化すると、価格乖離率は-10%を超え始める。2019年の調査結果と比べて、多くの売却期間で価格乖離率が僅かに拡大している様子が確認できる。
売却期間が1ヵ月以内での事例シェアは33.9%(2019年:39.6%)で、全体の1/3以上が売り出し開始から1ヵ月以内で成約に至っていた。また、3ヵ月以内の累計事例シェアは 55.8%(同 62.1%)と過半数を占め、売り出し開始から 2 回目の媒介契約の有効期間が終了するまでには全体の約3/4 に相当する74.6%(同79.5%)のケースで成約に至っていたことになる。

近畿圏 売却期間別 中古マンションの価格乖離

次に、売却期間ごとに価格乖離率のシェア構成を見てみると、売却期間が1ヵ月以内の場合に最もシェアが大きかったのは「-5%以内」の 46.9%で、次いで「0%(売出価格から値下げせず成約に至っているケース)」の 23.7%となっている。売却期間が1ヵ月以内の場合でも価格乖離率が-10%を超えるケースはあるものの、それらのシェアは合わせても10.0%に留まっている。一方、売却期間が8ヵ月まで長期化した場合、「-20%超」のシェアは 22.7%にも達しており、11ヵ月以上の場合に至っては 30%以上にも及んでいる。

(3)近畿圏 売却期間別 価格乖離率シェア(2020年)

※中古マンションの「価格乖離率」とは

中古マンションが売りに出された際の価格(=売出価格)とその物件が成約に至った際の価格(=取引価格)の差額との比率。

価格乖離率 = (取引価格 - 売出価格) ÷ 売出価格 × 100%
価格乖離率が正の値となるケースはごく稀であることから、負の値となるケースのみを対象としている。 また、データ抽出にあたっては、所在階数や専有面積などの情報を基に住戸の特定が可能な事例について各取引事例と当該住戸から生じた売出事例の中で最も古いもの(=最初の売出事例)を突き合わせ、売出開始から成約までに要した期間が 12ヵ月以内の組み合わせのみを対象として分析している。

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当記事出典

当記事は株式会社東京カンテイ「カンテイアイ特集(2021年7月29日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。

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