郊外でも都心部並みの価格上昇率!?~東京都中古マンション価格動向~

東京都の中古マンション価格は2013年以降、現在のコロナ禍にあっても上昇傾向が続いています。グラフの通り、2013年1月頃の東京都全体の平均成約単価は約1m2あたり50万円程度でしたが、今では80万円程度まで上昇し、実に当時の1.6倍ほどの価格になっています。

東京都中古マンション価格動向

東京都中古マンション成約単価と在庫推移

(公益財団法人東日本不動産流通機構「市況データ」より筆者作成)

2013年から2014年頃の価格上昇は、在庫の減少に伴うものと筆者は考えています。その後、在庫が急増しますが、このとき住宅ローン金利が大きく下がったことから、価格は下がることなくこれまでの上昇トレンドを維持したと考えられます。
18年以降、上昇トレンドは弱まるものの上昇傾向は続きました。コロナ禍による最初の緊急事態宣言時には、取引量の減少によって平均成約価格は下がりますが、在庫の急減によって、また同時に成約件数がこれまでより増加したため需要が増加したことも相まって、現在は価格上昇トレンドが強まったという状況にあります。

地域によって異なる価格上昇度合い

さて、2013年と2021年で1.6倍の価格になった東京都の中古マンション価格ですが、地域別に見ると、地域によって上昇度合いが異なることが分かります。
次のグラフは、都心3区(千代田区、中央区、港区)、城南地区(品川区、目黒区、世田谷区、大田区)、城西地区(新宿区、渋谷区、中野区、杉並区)、城東地区(台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区)、城北地区(文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区)、東京都下(都区部と島しょ部を除く)について、2013年1月から2021年5月までの平均成約単価をグラフ化したものです。

地域別中古マンション成約単価推移(万円/m2)

(公益財団法人東日本不動産流通機構「市況データ」より筆者作成)

グラフを見ると、都区部の価格上昇と東京都下のそれとは大きく異なることが分かると思います。2013年5月時点の平均成約価格が2021年5月において何倍になったかを計算すると、都心3区は1.68倍、城南地区1.54倍、城西地区1.52倍、城東地区1.6倍、城北地区1.54倍、東京都下1.23倍となっていました。

都区部と東京都下の上昇率にこうした差異が生じるのは、ある程度納得できる面はありますが、この倍率をそのまま鵜呑みにしてもよいのでしょうか?

東京都下の倍率が最も小さくなっているのは、直感的にも正しいように思えますが、これらは全て、地域ごとに取引された中古マンション成約単価の毎月の平均値です。価格の高い場所やタワーマンションの上層階、築年数の浅い物件などの取引件数が多ければ、平均値が上がってしまうという問題もあります。また平均値では、どの鉄道の沿線なのか、最寄り駅が急行停車駅かどうかといった細かな(ミクロ的視点での)立地の相違を反映しないデータとなるため、本来の価格上昇の姿を捉えることは難しいと思われます。

実際、現場の声を聞くと、東京都区部でも2割程度しか上がっていない地域もあれば、都下でも都区部並みに価格上昇している場所もあるという声がしばしば聞かれます。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

ミクロで分析すると違った姿が

そこで、筆者は、2013年4月~6月と2021年4月~6月に成約した中古マンション取引事例(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データを利用。築年数40年以下、専有面積150m2以下、バス便を除く。データ数は前者2,063件、後者2,600件。)を使って、東京都の5177町丁目ごとの中古マンション価格を予測し、その価格変化率を分析しました。

具体的には、築年数、専有面積、最寄駅からの距離、所在階、東京駅からの直線距離などの各取引事例に付帯する様々な属性を利用して、それぞれの属性が成約価格にどのような影響を及ぼしているのかを分析し、価格予想モデルを作ります。さらに、不動産価格は近い物件同士は似たような価格になるという特性を、各取引事例の緯度と経度を使ってモデル化し、実際に取引がなかった地点においても、取引があった場合はいくらで成約するかを予測できるようにします(いわゆる「クリギング」という空間データ推定の確率論的アプローチを利用)。

この価格予測モデルを使って、各町丁目の重心に築15年、最寄駅からの時間7分、所在階3階、専有面積70m2という標準的な中古マンションを仮定した場合の中古マンション成約単価予測について、2013年と2021年で比較したものが次の地図になります。

中古マンション成約価格予測

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成)

地図上の青色模様は、その色が濃くなればなるほど値上がりの倍率が高いことを示しています。最も濃い色の場合は、2013年比で1.8倍超となっていることを意味しています。
この地図を見ると分かるように、都区部中心部から離れると値上がり倍率は小さくなっていく様子が見て取れますが、23区東部のうち北千住界隈を除くエリアは、さほど上昇していないことが分かります。
一方、東京都下に目を向けると。立川、八王子、町田エリアは23区の中心部並みあるいはそれ以上に上昇しているエリアがあることが分かります。

まとめ

今回、東京都下でも23区中心部と変わらない上昇を見せている一方で、さほど上昇していないエリアもあることがわかりました。平均値で表されるデータは、実際に売れた物件データを単純平均しているに過ぎないため、必ずしも現実を映し出しているわけではないということを再認識しなければならないでしょう。

また、今回、立川エリアなどの価格上昇率が高くなったことは、コロナ禍において、リモートによる働き方が浸透し、郊外で自然の多いエリアであるにもかかわらず都心部へのアクセスが容易で、かつ都区部より総額が安い傾向にある物件に対する人気が高まった可能性があるのではないかと筆者は考えています。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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