東京23区の中古マンション価格 横ばい続くも選別は強まる?

今年2月下旬頃から新型コロナウイルス感染症が拡がり始め、3月以降、感染者が増加し4月16日には緊急事態宣言が発令、翌25日には解除されました。その後2ヶ月以上が経過しましたが、いったんは収束に向かうかと思われた感染者数は再び増加しています。
こうした中、今年1月から7月までの期間における東京都23区における中古マンションの取引動向について調べてみました。

東京23区マンション価格

23区の中古マンション成約価格、取引件数ともに年初水準に概ね戻る

23区の中古マンション価格は株価の影響を受けるという側面が少なからずあります。今年3月に日経平均は一時16,000円台まで落ち込みましたが、現在は今年1月の水準に概ね届きつつある状態まで戻しています。
筆者は、株価低迷が続けば、その半年から9か月後に住宅価格は下落し始め、戸建住宅で1割程度、マンションで1割から2割程度下落する可能性があると考えていましたが、今のところ、政府の金融政策によるところもあり、株価の低迷は見られません。

実際、23区の中古マンション平均成約単価の推移はグラフ(青い折れ線)の通りで、今年2月から4月にかけて低下したものの、7月には昨年末の水準まで戻しています。平均成約単価は、その時々に成約したマンションの品質(築年数や駅からの距離、立地など)が異なりますので、そのまま鵜呑みではできません。そこで、品質を調整した指数を作成しグラフ化したものがオレンジ色の折れ線です。これを見ると、今年1月から6月は横ばいだったことがわかります。

グラフ:平均成約単価と価格指数 2018年9月~2020年7月

東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成。なお、2020年7月のデータは同年8月1日までに登録された成約データ。

また、2019年8月以降の成約件数を調べてみたところ、今年3月から5月の成約件数は前年同月比で大きく下回っていましたが、6月と7月は前年同月と概ね変わらない水準まで戻していることがわかります。

このように、不要不急の外出自粛によって成約件数は一時的に減少したものの、今のところ、コロナ禍が都区部の中古マンション価格に大きな影響を及ぼしているようには見えません。

グラフ:2020年と2019年の成約件数

東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成。なお、2020年7月のデータは同年8月1日までに登録された成約データ。

最寄駅からの距離で選別強まる?

現時点では、成約件数は従来の水準に概ね戻り、価格については実質的に大きな変化は見られないという結果になっていますが、今までとは異なる数値の変化がありました。それは、最寄駅からの距離(徒歩時間)と成約単価の関係です。

昨年8月から今年7月までの最寄駅からの徒歩時間による成約単価の月次変化をグラフ化したものが次に示してあります。表示された数値は、最寄駅からの距離が1分増えると、成約単価がいくら減少するかということ月次ごとに示したものです。

グラフ:最寄駅から1分遅くなるごとに低下する成約単価(円/㎡)の月次変化

東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成。 なお、2020年7月のデータは同年8月1日までに登録された成約データ。

このグラフを見ると、過去1年間においては、最寄駅から1分遠くなると、概ね▲13,000円から▲15,000円程度、成約単価が減少するという傾向が見られましたが、緊急事態宣言の元で外出自粛の期間が最も長くなった5月については、▲16,000円を超える数値となっています。

▲16,000円を超える数値となったのは、5月に取引された物件が、最寄駅に近い物件と遠い物件とのばらつきが大きくなっていたためと考えることもできますが、昨年8月からのデータを見る限り、最寄駅からの徒歩時間は各月とも平均で約7分、標準偏差約4分で大きな相違は見られません(筆者調べ)でしたので、最寄駅から極端に遠いマンションや極めて近い物件が多く取引されたというわけではなく、従来と変わりない物件が取引されていたと考えられます。以上からすれば今年5月においては、駅に近い物件ほど価格は高まり、遠いほど価格が下がりやすいという傾向が強まったといえそうです。

コロナウィルス感染者の増加が更なる格差をもたらす可能性も

今後、この数値がどのように変化するか様子を見たいと思いますが、再びコロナウィルス感染者や重篤者が大幅に増加するような事態になった場合、取引件数は大きく落ち込む可能性があり、平均価格や価格指数に影響が見られなかったとしても、最寄駅からの徒歩時間による格差が広がる可能性がありそうです。

今回のコロナ禍で、テレワークが大きく浸透しましたので、もはや最寄駅からの距離は住まいの価格に影響を及ぼさなくなるのでは?という意見も散見されます。筆者もその可能性は十分にあると思っていますが、そこに到達するにはまだまだ時間がかかるのではないかと思っています。

テレワークの進展は、従来よりも郊外の一戸建てを求める層が増えるという意見が多く聞かれますし、実際にそうした動きも出つつあります。これがスタンダードになればマンション市場全体に一定の影響を及ぼすことにはなると思いますが、相対的に価値が下がるのは駅から遠い立地のマンションになるでしょう。いずれにせよ、マンションの資産性については、最寄駅からの距離といった利便性が従来以上に重視されることになるのではないかと思います。

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