【2016年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向

2016年3月22日、国土交通省が今年1月時点の公示地価を発表しました。 2015年1月以降1年間の地価変動率は、商業地、住宅地、工業地の全用途平均では0.1%(前年0.3%下落)と8年ぶりに上昇に転じました。 この背景にあるのが、前年から0.9%(前年同じ)上昇した商業地です。住宅地は0.2%下落(前年0.4%下落)でしたが、三大都市圏に限ると0.5%上昇(同0.4%上昇)で、ほぼ前年並みとなりました。 今後、住宅地を取り巻く市況はどのように動いていくのでしょうか。過去10年間の対前年変動率の推移をグラフで振り返りつつ、不動産アナリストに予想してもらいました。

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首都圏エリア

都心6区をエンジンとする東京と周辺3県のかい離が鮮明に

2008年9月に起きたリーマン・ショックで、2009年に前年比マイナス6%超も急落した東京。しかし、日本随一の高い資産性を備える都心部を擁するだけに素早い回復を示しました。2014年にはアベノミクスによる期待感にも後押しされて、対前年比変動率がプラスに転換。以降堅調に推移していました。

「アベノミクス以降、東京と周辺の神奈川、埼玉、千葉との地価上昇率のかい離が進んでいましたが、今回、その傾向はさらに鮮明になりました。東京のエンジン役を果たしているのが、都心6区(千代田、港、中央、新宿、文京、渋谷)。さらに、6区から波及して隣り合う品川区、目黒区、そして根強い人気を持つ武蔵野市や三鷹市、再開発で大規模商業施設やタワーマンションが登場した立川市なども含まれます」(高橋氏。以下コメントはすべて同じ)

なかでも注目のエリアはどこでしょうか。

「環状2号線 新橋・豊洲間の開通、新交通システムBRT(バス高速輸送システム)の導入やオリンピック前後に大規模再開発が行われる臨海部、リニア中央新幹線の2027年開業や隣に山手線新駅開業を控える品川駅周辺、大規模再開発が行われる東京の八重洲口、虎ノ門ヒルズ隣地の地下鉄新駅開業や大規模再開発などが行われる虎ノ門近辺、渋谷、新宿、池袋などの各ターミナルも再開発で今後も人気が高まり、さらなる地価上昇が予測されます。都心のなかで競争が起きている状態といえますね」

首都圏グラフ

価格高騰、課税強化で“様子見”増加 城北部では一戸建てが好調

地価は堅調に推移している一方、マンション市場では、昨年秋頃から少しずつネガティブなニュースも出てきたとのこと。

「新築の売れ行きが鈍ってきたことに加えて、中古の在庫も増え始めています。国内外の一部の富裕層向け億ションは別ですが、全般的に新築・中古の価格高騰に消費者の所得が追いつかず、購入マインドが低下したためです。また、これは全国的に言えることですが、タワーマンションへの課税強化が検討されているというニュースもあり、様子見する人も増えてきました。さらに、昨今取り沙汰されている“消費税10%増税先送り”が確実になれば、予定されていた今年9月末までの経過措置もなくなり、住宅の駆け込み需要が生まれなくなる可能性もあります」

ただし、木材が中心で資材が比較的安価なうえ、工期も短いため、建物価格がマンションより安い一戸建ては堅調に売れているといいます。

「特に土地にゆとりがある城北部の北区、板橋区、練馬区ではマンションに加えて一戸建てへのニーズも高く、売れ行きは好調です。沿線によっては都心へ乗り換えなしの直通で通える地域があり、マンション価格も都心ほど高くないので狙い目の場所といえます」

名古屋圏エリア

好調な地域経済に引っ張られて3年連続で地価上昇中

名古屋圏を代表する主幹産業のトヨタ自動車と周辺のグループ、系列企業は、かつてはミニバブル後の景況感悪化、東日本大震災、タイ工業団地の大洪水、円高などのダメージを受けていました。しかし、2013年以降は日銀の円安誘導によって自動車輸出が好調に転じ、アメリカ経済の回復に伴う北米市場の活況も奏功して、2013年に首都圏より1年早く、地価の対前年比変動率がプラスに転じています。

「以来、今年に至るまで3年連続で地価が上昇しており、ホットなエリアとなっています。2015年4~12月期には過去最高益を出したトヨタ自動車に加えて、2027年のリニア中央新幹線の名古屋駅開通によって、国が唱える“スーパーメガリージョン構想”の一翼を担うことや、愛知県内には試験飛行が成功したMRJ(三菱リージョナルジェット)、ロケット開発も行う三菱重工の主力工場もあるなどプラスの材料が多いだけに、今後も地価上昇の可能性は高そうです」

名古屋圏エリアグラフ

トヨタの地元・西三河地域の住宅市場活況 岐阜、三重は買いやすさ続く

先述した活況を反映して、名古屋駅近くの高層オフィスや名古屋市中心街の新築マンションの供給も活発化しました。特に、市内千種区や東区、昭和区、瑞穂区など名古屋駅東側のエリアに多く見られます。

「ただ、名古屋圏では職住近接を志向する一部の層を除き、大半の方は一戸建て志向派です。多いのは名古屋市に隣接した地域で、商業施設と自然が共存する良好な住環境が整っています。特にトヨタ自動車のお膝元である西三河地域では供給のほとんどが一戸建て。地価上昇率も高く、名古屋市の1.6に次ぐ、1.3を示しています。愛知県に隣接する三重、岐阜も住宅といえばほぼ一戸建てになります。愛知県との経済的な連携が一部に限定されていることもあり、ミニバブルやリーマン・ショックとはほぼ無縁のままだったため、地価は底ばいで推移してきました。名古屋中心街へ通勤する方にとっては、依然として買いやすい状態が続いているとも言えます」

関西圏エリア

外国人観光客急増で商業地地価上昇 住宅地地価も回復

日本の首都であり、2020年のオリンピックを控えて大規模再開発が進む東京、重厚長大系産業が牽引する名古屋に比較すると、関西圏は、以前から地域経済を引っ張る強力なリーダー役が少ない地域です。そのため、地価変動には東京、名古屋圏に比べるとタイムラグがあり、ミニバブル後の下げ幅縮小やリーマン・ショックからの回復は遅れていました。

ただし、そんな中、今年は近年の外国人観光客の急増によって大阪の商業地は前年比4.2%上昇。全国トップの伸び率を示し、現在もホテルの建設ラッシュが続いています。この影響もあってか、大阪府の住宅地の地価は下げ幅が前年比0%まで回復しました。

関西圏グラフ

大阪市中心部でタワーマンションが人気 地価の推移は横ばい続く見込み

「大阪市中心部の北区、中央区、天王寺区、浪花区など限定的ではありますが、タワーマンション供給が増えています。以前は阪神間の西宮や神戸三宮でもマンション開発が行われて人気を博しましたが、関西経済の中心地である大阪市街地に通勤する人にとっては、前述したエリアのタワーマンションなら職住近接の生活が実現できますし、価格的にも阪神間に比べて値ごろ感があるため、売れ行きは好調のようです」

大阪市街地の周辺の市部では、以前と変わらず一戸建てが中心。特に豊中市、枚方市、高槻市など北部で活発な供給が見られます。

「京都ではかつて市中心部で億ションが発売され、話題となりました。言わずと知れた国際観光都市であり、資産性も高いのですが、供給戸数が限定的なため市場に与える影響は大きくありません。景観条例もあってマンションが建ち難い地域なので、住宅は一戸建てが中心です。いずれにせよ地価の対前年変動率では、京都、大阪、兵庫は今後もさほど変わらず推移していきそうです」

※当記事の掲載データは、すべて国土交通省が公開している公示地価をもとに作成したものです。

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