【2011年】過去10年間の公示地価で見る住宅地・商業地の地価推移
今年も、3月に公示地価が発表されました。
長きにわたって続いた景気低迷やその後に起きたミニバブル、景気が上向いてきたさなかに起きたリーマン・ショックなど、さまざまな出来事に影響を受けてきた過去10年間の地価。その推移を、専門家に振り返ってもらいました。
首都圏エリア
マーケットが健全性を取り戻しつつある
バブル経済崩壊後の長い景気低迷により、住宅地・商業地ともに、地価は毎年前年を下まわる状態が続きました。ようやく対前年比がプラスに転じたのは、2006年の東京都。ここから2008年まではミニバブルと呼ばれますが、東京都に牽引されるように他の3県の地価も大きく前年を上まわるようになります。
そして2008年9月のリーマン・ショックの影響で、2009年には急落。今年の公示地価も、依然対前年比マイナスが続いています。
「ただし、2010年から2011年にかけての変動を見ると、住宅地・商業地ともに下落傾向が縮小しています。これは、比較的短期間で地価が調整された証左と言えます。地価が下落したことで、ある程度適性と考えられる価格水準に調整されて需給バランスが改善し、マーケットが健全性を取り戻したわけです。ちなみに、商業地の騰落の幅が住宅地より顕著なのは、投資マネーの占める割合が大きく、より経済動向に敏感に反応していることが主な要因です」(東京カンテイ中山さん、以下同)
名古屋エリア
景気の動向にあまり影響されないエリア
全般的に、名古屋圏の対前年比の推移は、住宅地・商業地とも首都圏と似た曲線を描いています。
ただし、岐阜県と三重県の対前年比が、ミニバブル期でもプラスになっていない点が首都圏との大きな違いです。
「まず愛知県の住宅地と商業地ですが、ミニバブル期にプラスに転じているのは、名古屋市の一部で顕著な上昇があったためです。特に商業地は、愛・地球博の開催やトヨタの存在感などから、名古屋駅周辺の商圏としてのポテンシャルが認められた点が大きいと思われます。2008年にピークに達した地価は、リーマン・ショックにより急激に下落したわけですが、住宅地については2009年で底値になったと見て購入に踏み切る消費者も多かったため、2010年、2011年と2年連続して下落率が縮小しています。一方、岐阜県と三重県は、住宅地・商業地ともに、ミニバブル期も含めてずっとマイナスが続いています。ただし、毎年下落を続けているといっても、ほんの数パーセント。好況・不況の影響をあまり受けず、安定推移する傾向にあることがうかがえます。つまり、購入の際は、景気の動向にそれほど神経質になる必要がなく、自分の都合やタイミングで決断しやすいのが特徴だと言えます」
関西エリア
リーマン・ショックのダメージから脱却か
住宅地と商業地で、曲線の角度が異なるのが関西圏の特徴です。住宅地は、3府県がそろって同じような対前年比で推移しています。
「住宅地はミニバブル期の上昇率が鈍い割に2009年の下落率が大きい点、また、2009年から2010年にかけて下げ幅が広がっている点から、ダメージの深さがうかがえます。ただし、2010年から2011年にかけては下落率が縮小しています。これは、阪神間の住宅ニーズの堅調さに後押しされて、安定感を取り戻しつつあることの現れです」
一方、商業地の推移は首都圏と類似していて、大阪府が上昇・下落を牽引する形になっています。
「ミニバブル期は、東京の地価が高騰し過ぎたせいで投資マネーが関西の商業地区に流れてきたと考えられます。このため、実勢では首都圏からほぼ1年遅れて似た曲線を描いているわけです。中長期的には、大阪駅の北側で進行中の大規模再開発にも要注目です。この成否によって、地価にも大きな影響が出てくるはずです」
まとめ
2009年から2010年にかけての推移にはバラつきがありましたが、2010年から2011年にかけては、大半のエリアで地価の下落率が縮小しています。
「本来であれば、来年はプラスに転じるエリアが多くなると予測するところですが、東日本大震災によって日本は多大なダメージを受け、先行きは不透明になりました。ただし、多少なりとも落ち着きを取り戻せば、これをきっかけに住まいについてきちんと見直そうという動きも強まると思われます。このため、不動産マーケットが一気に冷え込んでしまうことはないと考えています。今後も、落ち着いて推移を見守っていただきたいですね」
※当記事の掲載データは、すべて国土交通省が公開している公示地価をもとに作成したものです。
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