成約データから探る 値下がりしにくい中古マンションとは

住まいを購入する時の条件の一つとして、「値下がりのしにくさ」ということを考える方は少なからずいらっしゃるでしょう。今回、都区部の中でも人気のある住宅エリア、城南地区の中古マンション取引事例を分析することで、その答えに迫ってみたいと思います。

城南地区

城南地区の中古マンション取引事例

マンションの価格を決める要素は多々あると考えられますが、今回は、最寄り駅からの徒歩距離(分)、専有面積、築年数、所在階、大手7社(※)による分譲物件か否かによってどのように成約価格が形成されているのかを、回帰分析という統計手法を使って分析します。成約価格とこれらの要素の相関関係を分析することで、「値下がりのしにくさ」について考えることとします。

使用したデータは、公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された城南4区(港区、目黒区、品川区、大田区)における中古マンションの取引事例(18年8月~19年7月の成約データ3334件および13年8月~14年7月の成約データ2949件)です。

(※)住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスの7社

駅から近い物件

回帰分析を行ったところ、城南地区の中古マンションにおける価格形成に強い影響を及ぼしている要素は、

(1)最寄駅からの徒歩距離
(2)築年数
(3)大手7社分譲か否か

であることがわかりました。

以下の表にその内容を示していますが、現在においては、「最寄駅からの徒歩距離(分)」が1分遠くなると、成約単価が平均で28,127円/m2下がる傾向に、築年数が1年経過すると、平均で13,231円/m2成約単価が下がる傾向に、大手7社分譲の場合は、そうでないマンションに対して105,452円/m2が平均的に加算される傾向にあるということを意味しています。

中古マンションの価格形成に強い影響を及ぼしている要素

この表は現在と5年前の傾向の相違を示していますが、まず目につくのは、最寄り駅からの徒歩距離(分)における係数です。5年前に比べかなりシビアに評価されるようになったことが見て取れます。すなわち、駅からの距離を市場が強く意識するようになっているということです。

今後、駅からの距離に対する意識が薄れていくということは考えにくく、駅から近い物件の評価が遠い物件と比べて相対的に高くなる傾向が続くでしょう。であるとすれば、駅から近い物件が値下がりしにくいということが言えそうです。

大手7社か否かの違い

もう一つ、5年前と大きく変わっているのは大手7社か否かによる価格差です。5年前は大手7社のマンションはそれ以外のマンションに比べて57,710円/m2高く評価されており、現在では105,452円/m2に上昇しています。しかし、仮に大手7社のほうが築年数に応じた値下がり額が大きい場合、必ずしも大手7社のマンションのほうがよいとは言えません。

そこで、大手7社による分譲マンションか否かで築年数に対する値下がり額にどのような違いがあるか調べてみました。

築年数1年あたりの下落価格

大手7社による分譲マンションのほうが19,744円/m2とそうでないマンションよりも8千円/㎡以上も大きく値下がりする傾向にあることがわかりました。とはいえ、築年数1年経過あたりの下落価格がずっと変わらないまま、とは考えにくいです。実際に、築20年を超えると下落額は小さくなってくるというのが一般的です。

大手7社なら値下がりしにくいとは言えない

そこで、築20年以内と築20年超で、築年数1年経過あたりの下落額にどの程度の違いがあるのか調べなおしてみました。

次の表にあるように、築20年超の場合、築年数1年経過あたりの下落額は大手であろうとなかろうと、築20年以内に比べて値下がり幅が極めて小さくなっています。築20年超になると大手7社もそうでないものもあまり差はありません。

一方、築20年以内についてみると、大手7社とそれ以外では1年あたりの下落額に18,420円/m2もの差が出ています。

築20年以内と20年超での築年数1年あたりの下落額

築20年以内・築20年超それぞれにおける大手7社分譲マンションの加算額を調べたところ、築20年以内の場合、大手以外のマンションに比べて110,008円/m2が平均的に加算されることがわかりました。ということは、この加算額は約6年で消失してしまうという計算になります。また、築20年超は7,606円/m2が大手以外のマンションに平均的に加算されることがわかりましたが、これは同様に計算すると約5年で消えてしまうということになり、この差であれば、どちらもあまり変わりがないと言えます。

築20年以内と20年超における大手7社分譲の加算額

こうしてみると、大手7社の分譲だから値下がりしにくいとは言えないということになりそうです。

分析から見えた意外な事実

今回の分析から見えてきたことは、

(1)最寄駅からの徒歩距離が近い物件のほうが値下がりしにくい傾向にある
(2)新しい物件より古い物件のほうが値下がりしにくい傾向にある
(3)大手以外のほうが全般的に値下がりしにくい傾向にある
(4)大手7社の持つ価格差はその値下がり額の大きさで時間の経過ともに相殺されてしまう傾向にある

ということになります。

今回は城南4区のデータで分析していますが、23区全体で見ても同様の傾向が見られました。

あくまで成約データを使って簡単に分析した結果ですのでこれが絶対ではありませんし、人それぞれによって判断の基軸は異なるとは思いますが、今回抽出された結果も中古マンションの判断材料のひとつとして頭の片隅においてみてはいかがでしょうか。

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