マンションにおける適正な修繕積立金と将来負担額の目安とは
修繕積立金がこれからどれくらい上がる可能性があるのか?そもそも修繕積立金の額は適正なのか?
こうした疑問は、マンションを購入しようとしている方なら誰しもが気になるポイントでしょう。
マンションは新築分譲時、購入検討者に対してランニングコストを少なく見せることで売りやすくしたいという供給サイドの考えから、修繕積立金が低く設定されていることが多く、12年から15年毎に行われる大規模修繕に向けて、毎回マンション管理組合で修繕積立金の値上げを議論していくというのが一般的になっています。
その結果、適正な修繕積立金の額や将来の上昇額については、よくわからないということになってしまうのです。
今回は、マンション購入の際に参考となる修繕積立金の額や将来の上昇予測についてお話したいと思います。
国土交通省のガイドラインを参考にしてみよう
修繕積立金の目安になるものはないのか?という声にこたえるのが、国土交通省が発表している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」です。
このガイドラインは、主として新築マンションの購入検討者が修繕積立金の水準を判断する際の参考になるよう「修繕積立金の額の目安」を示したものです。修繕積立金の額は、個々のマンションごとに様々な要因によって異なりますし、ばらつきも大きいことから、実際に作成された長期修繕計画を幅広く収集し、その事例の平均値と事例の大部分(3分の2)が収まるような幅として示しています。つまり、統計学的に大抵のマンションがここに示された範囲に収まる可能性が高いということを意味しています。
なお、新築時から30年間に必要な修繕工事費の総額を当該期間で「均等に積み立てる方式(均等積立方式)」による修繕積立金(月額)として目安を示しています(次表参照)。
この表に記載された単価(/m2・月)に対象となるお部屋の面積を掛ければ、そのお部屋の修繕積立金の平均値と事例の2/3が包含される幅がわかるということです。
また、マンションに機械式駐車場がある場合は、その修繕工事に多額の費用を要することから、機械式駐車場に係る修繕積立金を特殊要因として上記の修繕積立金の目安に加算することとしています。
このガイドラインをどう使うか
ところで、このガイドラインは、分譲時から30年目まで同じ金額で積み立てる均等積立方式を想定していますので、単純に目安とするわけにはいかないという問題があります。冒頭にも申し上げた通り、世の中にあるマンションの多くは、均等積立方式ではなく、当初の積立額を少なく抑え段階的に積立額を値上げする方式(段階増額積立方式)だからです。
そこで段階増額積立方式のマンションにおける修繕積立金について目安を見出すために次のような方法が考えられます。仮に、次のようなマンションを購入するにあたり、その修繕積立金が適正なのか、今後どの程度上昇するのかを、簡単に予測してみましょう。
前述の表を調べてみると、上記のお部屋は修繕積立金の平均値が202円/m2・月ですから、このお部屋を分譲当時から所有し、30年間で負担すべき修繕積立金総額の目安は、
となります。
次に、不動産業者にそのお部屋の修繕積立金額の推移を確認します。例えば、当初8年は月額7,000円、9年目以降は月額12,000円だったとすると、これまでこのお部屋が負担してきた修繕積立金総額は、
となります。
ということは、あと20年で413万円(509万円ー96万円)かかる可能性があるということになります。仮に、11年目以降、30年目まで毎月均等額で積み立てるとすれば、
となるということが判ります。
また、現状の修繕積立金があと5年継続されたとすると、
となることが予測できます。
目安は目安に過ぎないという認識も必要
このように段階増額積立方式でもある程度の予測がつきます。とはいえ、マンションはそれぞれ置かれた状況が全く異なるため、ガイドラインで示された目安の中に必ずしも納まるわけではありません。また、築20数年を経過している中古マンションですとあまり参考にはなりません。
状況に応じて適切に修繕を行っているマンションと劣化を放置しているマンションでは修繕にかかるコストも変わってきます。修繕費用を抑え過ぎた結果、あとで思った以上のコストがかかってしまったというケースもありますし、多少コストが高い修繕部材であっても、これを利用することで修繕周期を伸ばすことができ、結果的にコストダウンを図っているというケースもあります。
今回お話した方法は購入時の参考にしつつも、管理組合が発行している定期総会議案書や議事録などから、マンションの劣化状況や長期修繕計画の内容を読み取り、修繕積立金の適正さと将来の上昇について予測していくことがよいでしょう。
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