年末年始こそ空き家処分の検討を

「空き家となった実家を兄弟姉妹で相続したけれど、それぞれの考えが異なることもあって「貸す」「売る」といった判断ができず、そのままになっています」「そもそも売れるのかしら?という疑問や不安があって、目をつぶってきたかもしれません」という空き家に関する相談を受けることがあります。今回はこうした空き家に対する悩みへの対処方法について考えたいと思います。

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空き家問題と国の政策から見えるもの

国土交通省によれば、空き家の総数は、この20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しています。種類別の内訳では、賃貸用又は売却用の住宅等を除いたその他の住宅349万戸がこの20年で約1.9倍に増加、そのうち、一戸建(木造)が最も多い240万戸としています。12年後の2033年には1955万戸にも上るという試算もあります。人口減少がささやかれる中で、空き家の問題は社会問題の一つとなっています。

こうした中、空家等対策の推進に関する特別措置法では、空き家を放置した結果、その空き家が、(1)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態、(3)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、(4)その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態にある場合は、「特定空家等」と判断し、建物の解体などについて指導や命令、場合によっては強制執行できるとし、固定資産税の軽減措置が受けられなくなるというルールがあります。また、相続で空き家を承継した場合、一定のルールに適合すれば、譲渡した場合に3000万円の特別控除が受けられるという制度もあります。

国は、「空き家のまま放置せず、きちんと管理してください」「放置したままにして特定空き家と判断されたら、保有コストを上げますよ。さらには解体をするよう指導したりしますよ。そうならないうちに、管理できないなら早めに売ってください。その場合は税金を安くしますよ」と言っているのです。

空き家放置がもたらす「負動産化」

こうした国の意図とは反対に、遠隔地にある空き家を承継してしまうと管理が難しく、結果として放置してしまうというケースがあります。相続で実家を承継してすぐに売れば売れたかもしれないものの、実家に残る懐かしい思い出や故人をしばらくは偲んでいたいという思いなどから、承継した兄弟姉妹の空き家に対する方針が異なることが多く、相続してから10数年以上も経過してしまったということもあります。また当時相続した兄弟姉妹が高齢となり再び相続が発生すると、その子供たちに所有権(共有)がさらに分散し、ますます意思決定が難しくなるという悪循環に陥ることもあります。

建物は時間の経過とともに老朽化が進み、住まい手がいない場合その劣化スピードはとても速くなります。また、地域によっては時間の経過とともに当時よりも需要が減少してしまったというケースもあります。需要の弱い地域で空き家を承継した場合はそのような事態に陥りやすいものです。

このようなケースになると、売るに売れない不動産を保有するということになる場合があります。これは、いつまでも維持管理責任を負わねばならず、固定資産税などの保有コストも負担し続けなければならない「負動産」を保有しつづけなければならないということになるのです。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

需要の有無を確認しよう

こうした事態に陥らないようにするためには、今現在、そこに需要があるのか、将来的な需要動向はどのように考えられるかということを確認することが大切です。

需要が強いか弱いかを確認する方法としては不動産業者に聞くのが定石です。売るか売らないにかかわらず、売却可能な市場がそこにあるのかどうかを全国展開している会社や地元に根差した不動産業者数社に聞いてみるというものです。あるいは空き家マッチングサイトの運営者に問い合わせをするという手もあります。彼らは一般的な不動産流通市場とは異なる需要者をとらえている場合があるからです。

時間があれば現地に足を運ぶことが大事です。以前よりも空き家が増えつつある、若い世帯が流入せず高齢化が進展し、メンテナンスされないままの住宅が増加しているなど、現地に行って、変化を感じ取ることも大事です。もしこのような変化があるならば、かつてより需要は減退している可能性が大きいです。また、市町村が人口予測を出しているならば、そうしたものも参考になります。人口が減少していくという予測が出ているならば、やはり需要の減退は近い将来現実のものとなる可能性もあります。

市町村が立地適正化計画を検討しているならば、それも今後の需要を占う重要な判断材料になります。立地適正化計画は、持続可能な都市構造への再構築を目指し、人口減少社会に対応したコンパクトシティを実現するためのマスタープランであり、市町村が必要に応じて策定する計画です。この計画の中で、居住を誘導する区域などを指定していくのですが、ここに入らない地域は、将来的に各種インフラ整備を積極的には行わない地域となる可能性もあり、これに該当する場合、将来の需要は弱くなる可能性が高いかもしれません。

家族で相談を

このように、需要の有無と将来動向を確認するのがおすすめです。そしてこうした確認作業を行うことについて、空き家を承継している家族や将来承継する可能性のある子供たちで話し合うことが大事だと思います。

使う予定がないならば、早めに手を打つことが家族の空き家問題から逃れるための最大の方法だとは思いますが、もし、家族で共有しているのであれば、この年末年始にあらためて空き家の処分について話し合ってはいかがでしょうか。

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