不動産売却の流れと注意点 高額かつスムーズに売却するコツを徹底解説
「自宅を売りたい。でも、進め方がわからない」「誰に相談すれば良いのだろう」・・・。今回は、そんなお悩みに答えます。お手持ちの不動産を、なるべく高く、かつスムーズに売却するためのポイントと注意点を紹介しますので、ぜひご活用ください。
不動産売却の前に知っておきたい注意点
▼状況や希望に合わせた売却方法を選ぶ
(1)仲介:不動産業者の仲介で、主に個人の買主へ売却する方法
(2)買取:不動産業者に買い取ってもらう方法
この2つの主な違いは、売却価格と売却までのスピードです。
仲介は、物件の相場価格を踏まえた価格で売ることができます。ただし、一般的に個人の買主を見つけますので、売却期間はおおよそ3~6カ月と時間がかかりますが、買取と比べて高く売れるケースが多いというメリットがあります。一方の買取は、不動産業者が買い取るため短期間で売却できますが、買取価格は相場価格の7~8割程度になることが一般的です。
この違いを踏まえると、急いで売りたい人は買取向きと言えるでしょう。急いで売りたいケースは、例えば、離婚の財産分与で自宅を現金化したい場合や、まとまった現金を用意する事情がある場合などです。そのような急ぐ事情がなければ、即決即金にはなりませんが、仲介で高く売る機会を狙うのが良いと言えます。
ちなみに、不動産売却の方法としては、住宅ローンが返済できなくなったときなどに行う任意売却や、競売などがあります。また、物件を売却して所有権を手放した後で、賃料を払って引き続きその物件に住むリースバックという方法もありますが、いずれもイレギュラーなケースですので不動産業者が買取するケースが多いです
▼売却スケジュールは売り出し準備から半年くらいが目安
仲介で売却までにかかる期間は、マンションは売り出し準備から3~4カ月くらい、土地や一戸建ては6カ月くらいを目安にしておくと良いでしょう。
マンションのほうが早く売れやすいのは、土地や一戸建てと比べてニーズが多いことと、土地や一戸建ては、測量(隣接する土地との境界線を明確にする作業)の時間が必要になる場合があるといった理由のためです。売り出してから売れるまでの期間は、物件の条件、売り出す時期、仲介会社の集客力などによって変わります。
この売却期間のほかに、売り出し前の準備として、仲介会社の選定や価格決めなどで数週間~1カ月、買主が決まってから引き渡すまでの実務などで1カ月くらいの時間がかかります。
▼売却には仲介手数料と各種手続きのための諸費用がかかる
不動産売却にかかる費用は、以下のようなものがあります。
これら諸費用は売却が決まったときに発生します。また、仲介手数料や税金などは売却額をもとにして計算しますので、売り出し価格を決める時にどれくらいの費用が発生するか概算で計算してみると良いでしょう。
費用名 | 費 用 |
---|---|
仲介手数料 | 売買価格× 3.3% + 6.6万円※1 |
印紙税 | 1,000円~60,000円 (売買価格により変動)※2 |
抵当権抹消費用 | 5,000円~20,000円目安 (司法書士へ支払い) |
住宅ローン一括返済の費用 | 10,000~30,000円目安 (一括繰上返済の手数料として金融機関へ支払い) |
税金 | 譲渡所得の20.315% (売却した年の1月1日時点で保有期間5年超の場合。5年以下の場合は39.63%) |
- ※1:売買価格400万円超の場合
- ※2:上記例は100万円超5億円以下の金額
不動産売却の流れと注意点
▼STEP1:複数の不動産会社から信頼できる会社へ査定を依頼
まず売却価格を決めるための査定を依頼します。
査定の主なポイントは、近隣物件の取引事例、公示価格と路線価、立地条件、物件の条件です。ただ、査定方法は不動産会社によって異なります。
複数の不動産会社に相談し、信頼できる会社へ査定を依頼します。
売却を行う際、土地や一戸建ての場合は測量が必要になるケースがあります。隣接している土地との境界線などに、境界標という杭のようなものが埋まっている場合は、おそらく境界線が明確になっていて測量が不要になる場合がありますが、詳しくは不動産会社へ確認しましょう。
また、境界が明確であり、隣地の土地所有者と土地の境界を確認したことを証明する確定測量図がある場合も測量が不要になるケースがありますが、こちらの場合も不動産会社へ確認しておくと良いでしょう。
上記に限らず、後々のトラブルを避けるためにも不動産売却における不明な点は不動産会社へ確認を依頼するようにしましょう。
▼STEP2:不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
査定を終えたら、査定した仲介会社の中から売買の仲介を依頼する会社を選びます。
仲介会社は、買主を探す集客力が大事です。また、価格交渉も仲介会社が行います。そのため、時期と価格の面で希望通りに売却できるかどうかは、どの仲介会社に任せるかにかかっているといっても良いでしょう。査定の際に接した時の対応を踏まえつつ、安心感や実績を比べて慎重に選ぶようにしましょう。
仲介会社を選んだら、仲介業務についての媒介契約を締結します。
媒介契約には3種類あります。
(1)一般媒介契約:複数の不動産会社と媒介契約を結び、買主を探した会社に仲介手数料を支払います。また、売主が独自に探した買主と直接契約することができます。
(2)専任媒介契約:1社を選んで媒介を依頼し、専任媒介契約を結んだ会社が売主の窓口となり買主を探します。仲介手数料もその会社に払います。また、売主が独自に探した買主と直接契約することができます。
(3)専属専任媒介契約:専任媒介契約と同様、契約した1社が売主の窓口となり買主を探します。また、売主が独自に買主を探した場合も仲介会社を通じて契約することになります。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数業者との仲介契約 | × | × | ○ |
依頼者自らが見つけた相手との契約 | × | ○ | ○ |
指定流通機構(レインズ)への 登録義務 |
5営業日以内 | 7営業日以内 | × |
業務処理報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | × |
一般媒介契約は、買主を探す会社が多い分だけ多くの買い手候補を探すことができます。ただ、仲介会社側から見ると買い手探しの競合が多くなり、仲介手数料を得られるのは買主を見つけた会社だけですので、専任媒介契約や専属専任媒介契約と比べて買い手探しの熱意は低くなる傾向があります。
その点を踏まえると、媒介契約は専任媒介か専属専任媒介を選ぶのが良いといえます。売主としても、仲介会社を1社に絞ることにより、複数の不動産会社と契約書を交わしたり、何度も打ち合わせをする手間と時間を抑えることができます。ご自身の状況に合った媒介契約を選択しましょう。
▼STEP3:価格を決めて不動産を売り出す
査定価格を踏まえて不動産の売り出し価格を決めます。
売り出し価格の設定は売れるかどうかに影響する重要なポイントです。相場より高すぎると買い手候補が現れませんし、かといって、安すぎるとなにか原因があるのではないかと疑われ、やはり売れなくなる要因になります。
そのため、価格設定は媒介契約を結んだ仲介会社から専門的なアドバイスをもらうと良いでしょう。アドバイスをもらう際には「早く売りたい」「少しでも高く売りたい」などの要望をきちんと伝えます。
また、価格交渉時の値下げを考えて、売り出し価格を少し高めにするといった売却戦略も相談してみると良いでしょう。
▼STEP4:準備をして買主に内覧してもらう
物件情報を公開して買い手候補から連絡を受けたら、内覧の対応を行います。
細かな対応は仲介会社に任せられますが、売主側は物件の印象をよくするために掃除をしておくことが大事です。この時点でまだ家に住んでいるかどうかにもよりますが、住んでいない場合は家具などを全て撤去しておくと広くて綺麗な印象になります。住みながら内覧対応する場合も、できるだけ物を減らした方が良いでしょう。
すでに家具などを撤去してある場合は、ハウスクリーニングを頼んで掃除してもらうと、汚れが目立ちやすい水回り(キッチン、浴室、洗面所、トイレ)も綺麗にでき、清潔な印象を与えることができます。トイレなどについては匂いの対策にもなります。
購入意向のある人は隅々まで物件を見ますので、ゆっくり見てもらえるように十分な時間を確保することも大事です。買い手候補から質問を受けることもありますので、近隣の特徴、便利な点、物件の良いところ、売却の理由など売主にしかわからないことはあらかじめ答えを用意しておきましょう。
▼STEP5:買主と不動産の売買契約を結ぶ
買主が決まったら不動産の売買契約に進みます。
細かな手続きは仲介会社に任せられますが、契約書の間違いがないように、住所などの基本情報、売買金額、手付金、引き渡し予定日と条件、引き渡し後の契約不適合責任(瑕疵担保責任)はしっかり確認します。
手付金はこの時点で受け取ります。手付金の金額は自由ですが、一般的には物件価格の5~10%とすることが多く、残金は引き渡し時に受け取ります。ちなみに、買主が住宅ローンを組む場合、ローン審査が通らないなどの理由で契約が解除となることもあります。その時には手付金を返却します。
▼STEP6:残金の受け取りと不動産の引き渡し
買主が住宅ローンを組む場合、残金の受け取り(振り込み)は金融機関で行われるのが一般的です。残金を受け取ったら買主に鍵、測量図、その他物件に関する書類などを渡します。この手続きを経て、司法書士が登記申請を行います。
この際、物件を引き渡したことを証明する確認書(引渡確認書や引渡証明書)を作成しておきましょう。書類を作っておくことで、後々のトラブルを避けることができます。
▼STEP7:不動産を売却した翌年に確定申告をする
不動産売却によって売却益を得た場合、または売却損が発生して損益通算(他の所得と合算すること)したい場合は、売却した年の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告をします(日付は年によって変わることがあります)。
売却益を得た場合は、利益に対する所得税・住民税を確定します。ちなみに、今まで住んでいた自宅の売却は、要件を満たすことによって3,000万円までの利益が非課税になります(「3,000万円の特別控除」)。
売却損が出た場合、確定申告によって税金の還付が受けられることがありますので、仲介会社や税務署に詳細を相談してみましょう。
※譲渡所得(譲渡損益) = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
不動産売却の条件・状況に応じた注意点
▼住宅ローンが残っている際の注意点
住宅ローンが残っている家は抵当権がついていますので、その状態では売却できません。そのため、売却前にローンを完済するか、売却時に得るお金で完済します。いずれの方法でも完済すれば問題ありませんが、売却金額がローンの残額を下回る場合は、足りない分を準備しなければなりません。
▼相続した不動産を売却する際の注意点
相続した物件の売却で、登記上の名義をそのままにしている場合も、そのままでは売却できません。この場合、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する必要があります(所有権移転登記)。
相続した人が自分以外にもいる場合は、その人の同意が必要です。例えば、自分と弟がふたりで物件を相続し、その物件を売却するのであれば、自分と弟の両方が売却に合意している必要があるということです。
相続した人全員が売却に合意している場合は、不動産を売却でき、売却で得たお金を相続人で分けることができます。
相続人の誰かが売却に反対している場合は、反対している人の持ち分を現金などで買い取り、単独で所有する状態にしてから売却することができます。または、売却に反対している人がいても、自分の持分のみであれば単独で売却することができます。
ちなみに、親などから相続した不動産は、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡した場合は実際の取得費に一定の相続税を加算して、譲渡所得にかかる税金を軽減することができます。
▼親の不動産を代わりに売却する際の注意点
親が物件の所有者である不動産を代わりに売却する場合は、親に売却の意思があってもその状態では売却できません。この場合は自分が親の代理人となって売却します。具体的には、「家の売却を子供に委任する」と示し、親が署名、実印を押印した委任状と、印鑑証明をもらい、代理人として売却手続きを進めます。
まとめ:頼れる会社を選ぶことが「不動産売却」成功のカギ
不動産売却は、流れそのものはシンプルですが、専門知識が必要な手続きも含まれます。専門的なアドバイスを受けることが、より高く、より早く売ることにつながる可能性があります。
不動産売却成功のカギは、きちんと相談でき、安心して仲介を任せられる会社を選ぶことです。もし、「自宅を売ろう」と思ったら、まずはステップ1で複数の会社に査定を依頼し、実績がある信頼できる会社選びをスタートしましょう。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
・ | 本コンテンツに掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。 |
・ | 本コンテンツに掲載の情報は執筆時点のものです。また、本コンテンツは執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び当社が保証するものではありません。 |
・ | 本コンテンツは、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。 |
・ | 本コンテンツに掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。 |
・ | 本コンテンツに掲載の情報に関するご質問には執筆者及び当社はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。 |