2023年 中古マンションのリセールバリュー

東京カンテイが築10年中古マンションのリセールバリューについて調査・分析しました。

2023年 中古マンションのリセールバリュー

首都圏

2023年のリセールバリュー最高駅は「新御茶ノ水」の295.5%

対象445駅のうち8駅で200%超え、資産価値が1.5倍以上となった駅は121駅を数える

首都圏平均は139.5%、今回は資産価値が1割以上目減りした駅もゼロに

首都圏においてリセールバリューが算出可能だった駅は445駅で、その平均値は139.5%となった。対象物件が分譲された2013年前後は価格高騰局面に入って間もない時期で、新築マンションの販売価格は直近に比べてかなり割安感が強かった。それに対して、現在の中古マンション市場では世界各地の紛争による物価高や各国との金融政策の違いに起因した歴史的な円安によって海外からの投資マネーが流入しやすくなったことなどを背景に新築マンションに連られる形で中古マンションの価格水準も押し上がっており、最近では一般勤労者の実需ニーズが中心の東京都下や周辺3県の近郊~郊外エリアでも新築分譲時の販売価格を上回ることが常態化してきている。

主要駅におけるリセールバリューを色分けした路線図を見ると、リセールバリューが150%以上を示す紫色の駅(=新築分譲時に比べて1.5倍以上の価格で中古流通している駅)は東京都心部に位置するJR山手線エリアに多く分布している。また、昨年に比べるとJR山手線エリアの北側や湾岸エリア、城南~城西エリアや城東エリアでその数を増やしている。一方、新築分譲時よりも資産価値が目減りしている駅は東京都下や周辺3県の遠隔地に散見される程度しかなく、築後10年が経過した割には目減りの度合いも1割弱に留まっている。対象となった445駅の内訳を見ると、紫色が121駅(シェア27.2%)、青色が316駅(同71.0%)で、対象駅のほとんどで新築分譲時を上回る資産価値を示している。なお、全体の40.7%に相当する181駅では首都圏平均のリセールバリューを上回った。一方、資産価値が新築分譲時を下回った駅を見てみると、緑色の8駅(同1.8%)のみで、今回は桃色や赤色に続いて資産価値が1割以上目減りしたことを示す橙色も皆無となっている。

上位駅のうち「六本木一丁目」を含む港区が最多で12駅に微増、次点の千代田区も7駅に増加

2023年に最もリセールバリューが高かった駅は東京メトロ千代田線「新御茶ノ水」の295.5%で、築10年中古流通時のマンション価格が新築分譲時に比べて3倍近くまで値上がりしていた計算となる。対象物件は大手ゼネコンが施工した41階建ての駅近大規模タワーマンションのみで、中古流通している住戸の所在階が全て20階以上ということもあり、築後10年を経た現在の中古流通価格は坪1,200万円を優に超えている。ただし、この数値に関しては個別のバイアスが大きく影響していることも加味する必要がある。ランキング上位30駅の内訳を見ると、海外の投資家や富裕層からもニーズを集める港区が最多の12駅、次点以降は番町をはじめ国内の富裕層から高い人気を集める高級住宅地が存在する千代田区(7駅)や駅前再開発によって街のポテンシャルが向上した渋谷区(5駅)となっている。なお、前回東京23区以外の駅としてランクインしていた「片瀬江ノ島」や「桜木町」は今回リセールバリューの低下に伴って大幅に順位を落としており、それらに取って代わる形で東京オリンピックを契機に再開発が推し進められている「築地」や「国立競技場」がランクインして東京23区の駅が上位を独占する結果となった。

中部圏

2023年にリセールバリューが最も高かった駅は「新舞子」の158.6%

対象74駅のうち3/4以上が100%超え、資産価値が1割以上目減りした駅は6駅に増加

中部圏平均は110.5%、首都圏や近畿圏とは異なり資産価値が2倍以上となった駅は確認されず

中部圏においてリセールバリューが算出可能だった駅は74駅で、その平均値は110.5%となった。地域経済を牽引する自動車関連企業の好業績を受けた住宅購入ニーズの高まりや建築コストの上昇などを背景に、中部圏でも中古マンション価格は堅調に推移しており、資産価値が新築分譲時を上回る駅は名古屋市中心部のみならず近郊~郊外エリアでも徐々に増加してきている。ただし、割安な価格の一戸建て住宅が多いエリアでは住宅全般の相場価格の上値が抑制される形となるので、資産価値の上昇度合いも限定的となりやすい傾向にある。また、名古屋市中心部においては相場価格を押し上げる要因となり得る投資ニーズが東京都心部や大阪市中心部ほど高まっていないために、リセールバリューが200%を超える駅は確認されなかった。

主要駅におけるリセールバリューを色分けした路線図を見ると、リセールバリューが100%以上を示す駅(=新築分譲時の価格以上に中古流通している駅)は例年通りJR名古屋駅~東山エリアにかけての名古屋市中心部に多く分布しているが、直近にかけては中部圏の近郊~郊外エリアでも増加してきており、今回は三重県内でも散見されている。対象となった74駅の内訳を見ると、紫色が1駅(シェア1.3%)、青色が56駅(同75.7%)、緑色が11駅(同14.9%)で、全体の48.6%に相当する36駅では中部圏平均のリセールバリューを上回った。なお、100%以上の合計シェアを比べると首都圏(98.2%)や近畿圏(95.9%)よりも20ポイントほど下回っているが、その大部分は紫色の駅がほとんどないことに起因している。一方、資産価値が1割以上目減りした駅を見てみると、橙色が5駅(同6.8%)、赤色が1駅(同1.3%)で、3割以上の目減りを表す桃色に関しては3年連続で確認されなかった。

上位駅として名古屋市内から22駅がランクイン、「久屋大通」を含む中区が最多の7駅

2023年に最もリセールバリューが高かった駅は名鉄常滑線「新舞子」の158.6%で、築10年中古流通時のマンション価格が新築分譲時に比べて6割近くも値上がりしていた計算となる。対象となったのは1物件のみで、中古流通している住戸のうち高層階に位置するもので強気の値付けが為されたために高めのリセールバリューを示したと考えられる。なお、他の住戸のリセールバリューに関しては概ね110%台に留まっている。ランキング上位30駅のうち約3/4に相当する22駅は名古屋市内に位置しており、同市中区の7駅が最多となっている。上位駅の全てで110%を超えたが、総じて150%を上回っていた首都圏や近畿圏に比べると資産価値の上昇度合いは限定的となっている。東京都心部や大阪市中心部に対して名古屋エリアは住宅価格全般で一戸建て住宅が支配的であるという地域特性に加えて、居住ニーズに直結する人口動態で大幅な転出超過を示していないこと、海外からの投資ニーズが世界的にも通用する都市に絞り込まれる中で対象になりにくくなっていることなども影響し、上位駅の中には中古流通時の価格が伸び悩んで前回からリセールバリューをやや下げたケースも見られる。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

近畿圏

2023年にリセールバリューが最も高かった駅は「大阪」の200.7%

対象194駅のうち39駅で150%超え、新築時から資産価値が目減りした駅は8駅のみ

近畿圏平均は132.3%、資産価値が1.5倍以上となった駅は大阪市・神戸市・京都市の中心部に集中

近畿圏においてリセールバリューが算出可能だった駅は194駅で、その平均値は132.3%となった。建築コストの上昇や供給物件の好立地・高スペック化などを背景に新築マンションの価格高騰は全国的な動きとなっており、近畿圏でもそれに伴って中古マンション価格が連れ高の様相を呈している。現在ではエリアを問わず圏域全体で資産価値の押し上がりが認められるものの、その度合いは街の面的な大規模再開発や人口動態に基づく将来性、それらを見込んだ投資適性の有無などによって大きく異なっており、直近にかけては実需・投資の両ニーズを集める大阪市中心部で新築分譲時の販売価格を大幅に上回る駅が急激に増加してきている。

主要駅におけるリセールバリューを色分けした路線図を見ると、リセールバリューが150%以上を示す紫色の駅(=新築分譲時に比べて1.5倍以上の価格で中古流通している駅)は大阪市・神戸市・京都市の中心部に集中しており、その数はニーズの多寡(特に直近にかけては投資ニーズ)に比例する形で大阪市中心部に位置する駅の数が突出している。対象となった194駅の内訳を見ると、紫色が39駅(シェア20.1%)、青色が147駅(同75.8%)で、対象駅のほとんどで新築分譲時を上回る資産価値を示している。なお、全体の48.5%に相当する94駅では近畿圏平均のリセールバリューを上回った。一方、資産価値が新築分譲時を下回った駅をそれぞれ見てみると、緑色が3駅(同1.5%)、橙色が4駅(同2.1%)、赤色が1駅(同0.5%)で、資産価値が目減りした駅の合計シェアは24.0%→6.8%→4.1%と僅か2年間で約20ポイントも縮小している。

ランキング上位駅のうち大阪エリアが17駅→20駅に増加して全体の2/3を占める

2023年に最もリセールバリューが高かった駅はJR大阪環状線「大阪」の200.7%で、築10年中古流通時のマンション価格が新築分譲時に比べて約2倍まで値上がりしていた計算となる。対象6物件のうち2物件は大手ゼネコンが手掛けた大規模タワーマンションで、いずれもターミナル駅の「大阪」から徒歩10分以内という好立地を背景に物件単位のリセールバリューは200%以上と高い水準を誇っている。なお、他の4物件に関しては徒歩11分~15分とやや離れているが、物件単位のリセールバリューは150%~180%と総じて近畿圏平均を上回っている。ランキング上位30駅のうち全体の2/3に相当する20駅が大阪エリアで占められており、その多くは市内中心部のオフィスエリアにアクセスしやすい大阪メトロ各線やJR大阪環状線の駅となっている。この他、京都エリアからは「烏丸」「祇園四条」「烏丸御池」など7駅、神戸エリアからは「県庁前」「神戸」の2駅がそれぞれランクインしている。残る1駅は京阪エリアに位置する「高槻」が例年通り登場した一方で、滋賀県・奈良県・和歌山県の駅に関しては今回もランキング上位に登場していない。

中古マンションのリセールバリュー(価格維持率)について

竣工から10年間が経過した分譲マンション(本調査ではサンプル数を確保するために築後9年~11年の物件)のうち、現在中古流通している物件を抽出し、分譲当時の価格と現在の価格から算出した指数。

リセールバリュー(%) = 中古流通時の価格 ÷ 新築分譲時の価格 × 100
なお、専有面積30m²未満、事務所・店舗用のユニットは集計から除外している。また、駅毎で数値を算出するにあたっては一定以上のサンプル数を有する駅に限って掲出している。

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当記事出典

当記事は株式会社東京カンテイ「カンテイアイ特集(2024年5月1日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。

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