【2024年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向

2024年3月26日、国土交通省が標準地の地価を公示しました。
3大都市圏の過去10年間の対前年変動率と中心部平均m²単価の推移をもとに、今後の動向を不動産アナリストに予想していただきました。

※本記事に掲載している折れ線グラフは、地価公示にともなって国土交通省が公表した各都府県地価の対前年変動率をもとに編集部で作成しました。いずれも2015年の地価を100%とした場合の推移を表しています。

公示地価推移イメージ画像

首都圏

コロナ禍で中断した上昇傾向が本格的に再開

首都圏公示地価

1都3県の住宅地価の対前年変動率は、2013年から2014年にかけてプラスに転じ、2020年まで右肩上がりを続けました。2021年にはコロナ禍の影響で微減しましたが、2022年からは再び上昇傾向が続いています。

「2024年の対前年変動率は、1都3県のいずれもプラスで、上り幅は昨年を上まわっています。コロナ禍前に見られた上昇傾向が再開して3年目になりますが、上がり方が本格化した感じです。なお、これまでは東京都が首都圏の上昇傾向を牽引していましたが、今年は千葉県の対前年変動率がプラス4.3%で、プラス4.1%の東京都を上回っています。都心部を中心とする人気エリアの地価高騰を受け、これまで割安感のあるエリアが多かった千葉県で需要が急増したためと見ています。浦安市や市川市など、東京都に近いエリアをはじめ、柏市や我孫子市など、つくばエクスプレスや常磐線の沿線にも上昇傾向が見られます」(東京カンテイ高橋さん、以下同)

当面は実需の高まりを受けて上昇傾向が続く見込み

高橋さんは、都市部の地価高騰は建築コスト増にともなう住宅価格の高騰や実需の高まりなどによるもので、今後も上昇傾向は継続すると見ています。

「東京都心部などの住宅地価は“国内の常識”に照らすと相当高額になっていますが、それでも海外の都市部に比べるとまだまだ割安です。一定のレベルに達したところで上昇角度が鈍る可能性はありますが、上昇傾向自体は当面続くでしょう。なお、地価公示の前に日銀がマイナス金利政策の解除を発表して話題になりましたが、買い控えを誘発するほどの急変ではないので、地価にはさほど影響しないと思います」

名古屋圏

愛知県は上昇度合いが高まり、岐阜県・三重県は微減続き

名古屋圏公示地価

愛知県のグラフ曲線は東京都と似ていて、コロナ禍の影響で2021年に微減した後は、再び上昇傾向を続けています。半面、岐阜県・三重県は、緩やかな微減傾向が続いています。

「愛知県における住宅地価の対前年変動率は、2022年以降、3年連続で上げ幅が広がっていて、今年はプラス2.8%でした。主軸の自動車産業が堅調で、名駅エリアの再開発なども相まって住宅ニーズが高まっている表れでしょう。反対に、岐阜県と三重県の住宅地価が微減傾向を続けているのは、人口減が続いているからです。中心都市である県庁所在地周辺や、事業集積地の名古屋駅周辺に出やすいエリアなど、新たな住宅ニーズが限定的になっていることが主要因でしょう。ただ、両県には大きく下落する動きも見られないので、投資ではなくマイホーム購入なら、マーケットの動きを気にせず自身の都合やタイミングで考えられるとも言えます」

愛知県の上昇、岐阜県・三重県の下降は今後も続きそう

高橋さんは、愛知県の上昇傾向、岐阜県・三重県の微減傾向ともに、今後も継続すると予測します。

「愛知県の住宅地価は、トヨタ自動車の業績に左右されます。国内への半導体工場誘致が進んでいることなどから、同社の経営は今後も堅調に推移する見通しですから、地価も上昇傾向が続くでしょう。ただし、上昇程度は首都圏ほどにはならないと思われます。名古屋圏の住宅マーケットでは一戸建てのウエイトが高く、大規模マンションのような大型開発が限定的です。用地取得の競争が首都圏ほどは激化しないと考えられるためです。一方、岐阜県・三重県については、全国的に人口減少フェーズに入っていることもあり、今後も緩やかな下降が続くと見ています」

関西圏

地元経済が復調し、地価上昇が本格化

関西圏公示地価

関西圏の住宅地価の対前年変動率は、プラスの場合でもマイナスの場合でも1%未満で、ほぼ横ばい状態が続いてきました。しかし昨年から今年にかけては、グラフのとおり上昇角度が高くなっています。

「2024年の対前年変動率は、大阪府・京都府がプラス1.6%で、兵庫県がプラス1.4%でした。コロナ禍の収束後、まずは国内、次いで海外からの観光客の出足が戻りました。今年の対前年変動率の上げ幅が広がったのは、観光業をはじめ地域経済が本格的に息を吹き返し、それにともなって住宅ニーズが活性化した表れでしょう。大阪府・京都府の住宅地価が10年前と比べて3%前後のプラスになっているのに対し、兵庫県はようやく10年前の水準に戻った形です。大阪府・京都府のそれぞれが住宅ニーズを高めているのに対し、兵庫県(特に神戸市中心部から阪神エリアにかけて)は大阪市のベッドタウンという位置づけで考える人が多いため、時間や上昇程度に差が生じているものと思われます」

昨今の円安が地価上昇の加速要因に

コロナ禍が収束して外国人観光客が多数訪れるようになり、関西圏の地価は上昇傾向が顕著になってきました。高橋さんは、今後も上昇に期待できるといいます。

「関西圏では観光業の活況度合いが地元経済に大きく影響しますが、コロナ禍収束による渡航規制解除で、インバウンドはかなり復調しています。加えて、このところ世間では株価上昇に熱い視線が注がれていますが、主たる要因である円安は、海外からの観光客増の追い風にもなります。こうした正の連鎖にともない、今後の大阪府と京都府では開発の活性化にも期待できますから、地価の上昇傾向は続くと見ています。先述のとおり、大阪市のベッドタウンという位置づけになっている兵庫県も、神戸市以東を中心に大阪府の地価上昇を追随していくでしょう」

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