【2023年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向

2023年3月22日、国土交通省が標準地の地価を公示しました。
3大都市圏の過去10年間の対前年変動率と中心部平均m²単価の推移をもとに、今後の動向を不動産アナリストに予想していただきました。

※本記事に掲載している折れ線グラフは、地価公示にともなって国土交通省が公表した各都府県地価の対前年変動率をもとに編集部で作成しました。いずれも2014年の地価を100%とした場合の推移を表しています。

公示地価推移イメージ画像

首都圏

コロナの弱毒化を受けて上昇傾向が加速

首都圏公示地価

1都3県の住宅地価は、2014年以降、アベノミクスの影響などで上昇を続けてきました。2021年には新型コロナウイルス感染拡大によって下落しましたが、翌2022年には回復し、今年は1都3県とも前年を上回る伸びが見られます。

「全国的に、昨年よりも上昇率が高くなっていますが、これはコロナが弱毒化して経済がまわり始めた表れでしょう。コロナ前に見られたように、都市部と郊外の濃淡の差が再び顕著になってきた印象です。今年の首都圏の対前年変動率は、神奈川県や埼玉県がプラス1%台なのに対し、千葉県がプラス2.3%と、東京都に次ぐ水準になっています。これは、東京都心部を中心に価格が上がり過ぎていることを受け、“予算的に手が届く”ところに目を向ける人が増えたためでしょう。千葉県では、特に浦安市や市川市など、東京都に近いエリアの上昇率が高くなっています」(東京カンテイ高橋さん、以下同)

通勤利便性を重視する傾向が再び強まりそう

高橋さんは、コロナ禍が深刻だったころと今を比べると、住宅ニーズに変化がみられると指摘します。

「コロナ禍が深刻だったころは、テレワークの普及もあって家で過ごす時間が増え、住環境を重視する人も見受けられました。一方、テレワークを導入した企業の多くは対面の重要性を再認識し、最近ではコロナ禍前の通常勤務形態に戻しているところが多くなっています。このため、今後の住まい選びでは、再び通勤利便性を重視して探す人が増えるでしょう。東京都心部を中心に、東京部が通勤圏に収まる3県の東京都隣接部の住宅地価は、今後も上昇傾向が続く見通しです」

名古屋圏

愛知県の上昇度合いが強まる一方、岐阜県・三重県は微減が継続

名古屋圏公示地価

愛知県の住宅地価は、2020年まで上昇を続けた後、コロナ禍の影響で下がり、2022年から再び上昇傾向へと転じました。一方、岐阜県と三重県は微減傾向が続いています。

「愛知県の住宅地価の対前年変動率は、2022年がプラス1%で、今年は2.3%と上げ幅が広がりました。トヨタ自動車を中心とした自動車産業が堅調なうえ、名古屋市内の再開発が活況なことが影響していると思われます。一方、岐阜県と三重県の住宅地価は、2014年以降、ずっと微減傾向が続いています。これは、流入人口が伸び悩む状態が続き、住宅ニーズが増えないためと考えられます。ただし昨年と今年で対前年変動率を比べると、岐阜県がマイナス0.9%からマイナス0.6%へ、三重県がマイナス0.7%からマイナス0.2%へと、いずれも下げ幅が小さくなっています。愛知県の事業集積地が通勤圏に収まる市などを中心に、下げ止まっているエリアが出てきた影響でしょう」

愛知県は、経済情勢やリニア中央新幹線の見通しに注目

高橋さんは、愛知県の住宅地価は名古屋市を中心に上昇傾向が続く見込みと予測しつつ、経済情勢やリニア中央新幹線の開発動向から影響を受ける可能性も指摘します。

「コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響でサプライチェーンが混乱し、半導体を始め、さまざまな資材が不足・高騰しています。これらが、自動車産業の失速につながるようだと、住宅地価にも影響がおよぶでしょう。また、一時は名古屋駅周辺の投資を加速させたリニア中央新幹線ですが、静岡工区の停滞によって見通しが不透明になっています。問題が解決すれば上昇の要因に、不透明感が続けば失速の要因になりますから、情勢を注視する必要があります。岐阜・三重の両県は、良くも悪くも大きな変動要因はありませんから、過度に情勢に気を配る必要はないでしょう」

関西圏

観光客の出足が戻り、復調の兆しが

関西圏公示地価

関西圏の住宅地価は、ほぼ横ばい傾向が続きました。2020年に微増したものの、翌2021年にはコロナ禍で下降してしまいました。首都圏や愛知県は2022年に復調しましたが、関西圏では今年になってコロナ禍前の水準に戻った感じです。

「大阪府・京都府の経済の大部分は、観光客によるインバウンドで支えられています。コロナ禍による外国人の渡航規制・人流抑制によってダメージを受けたため、商業地周辺の居住ニーズが高まらず、2022年も低調だったと見ています。しかし、コロナによる規制が緩和され、まずは国内の観光客が増えてきたため、大阪市中心部に出やすいエリアで住宅ニーズが復調しつつあります。今年の対前年変動率が、3府県ともプラス0.7%に転じたのは、このような背景が要因になっていると思われます」

インバウンドの復調が、住宅ニーズ増加のカギを握る

2022年秋には外国人の渡航規制が緩和され、海外からの観光客が増え始めました。高橋さんは、この状況が3府県の住宅地価にもいい影響をもたらすのではといいます。

「例えば、2025年に日本国際博覧会を控えた大阪府では、既存の鉄道路線の延伸や新路線の敷設などが進められています。インバウンドの復調で傷んだ経済が回復すれば、交通利便性の向上による住宅ニーズ押し上げにも期待できるでしょう。同様に、京都府も、インバウンドの復調で、住宅ニーズが高まるでしょう。一方、兵庫県は、大阪市のベッドタウン化が進んでいます。神戸市中心部で経済的な盛り上がりが起きるかどうかが、今後の行方を左右するでしょう。なお、都市部と郊外の二極化は、3大都市圏中、関西圏にもっとも色濃く表れているようです。今後の住宅ニーズは、大阪市中心部にダイレクトアクセスできるような地域に集中する傾向が強まるのではないでしょうか」

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