新型コロナ感染拡大でわかった「不動産」の売り時、買い時は

新型コロナ感染拡大で2020年4月、緊急事態宣言が発出され、不動産市場に動揺が広がった。しかし、その後の回復は予想外に早かった。新型コロナ感染拡大という未曽有の事態を迎えながら不動産市況の底堅さが証明された形だが、コロナ終息後の「不動産」の売り時、買い時はいつか。

新型コロナ感染拡大で不動産価格はどう動いたか

新型コロナ感染症が拡大し始めた2020年の春は、先が読めない状況の中で不動産市場にも動揺が広がった。1回目の緊急事態宣言が発出された4月以降は新築マンションのモデルルームが軒並み閉鎖され、仲介会社もほぼ開店休業状態となった。

首都圏の中古マンションm²単価(成約価格)の動きを見ても、19年は上昇気味で推移していた相場が20年2月には下落に転じ、4月にかけて落ち込んでいることがわかる。一時は「このまま不動産相場は下落が続き、特に都心の不動産は暴落するのでは」との見方もあったほどだ。

だが、その後の回復は予想外に早かった。5月には中古マンションm²単価が上昇に転じ、感染第2波が広がった8月にいったん下落したものの、その後も上昇基調が続き、11月には年初のピークを超えている。

特に東京都は10月には1月のm²単価を超え、今年1月は前年同月比3.1%アップの77.10万円を記録した。今年1月1日時点の公示地価は全国平均が6年ぶりに下落したが、年後半は持ち直しの動きも見られる。

コロナ禍中での不動産価格上昇は在宅時間の増加が要因

コロナ禍にもかかわらず不動産価格が上昇している要因の一つには、人々の在宅時間が増加し、持ち家のニーズが高まっていることが挙げられるだろう。リモートワークが普及し、自宅でWeb会議をする機会が増えたことで、より広い家や部屋数の多い家のニーズが強まったのだ。

在宅時間の増加はまた、住まいへの不満を高めるきっかけにもなる。遮音性や断熱性の低さを改めて痛感し、住み心地の良い持ち家を求める人が増えているようだ。

こうした広さや住み心地へのニーズが高まることで、当初は郊外の一戸建てに人気が集中するとの見方もあった。だが、中古マンションm²単価のデータからもわかるように、東京都の住宅需要はむしろ強まっているのだ。その背景には、密になりがちな通勤時間をできるだけ短縮したいという、利便性に対する根強いニーズがあるものと考えられる。

不動産価格の上昇をもたらしているより大きな要因としては、日銀による金融緩和策の強化が挙げられる。コロナ禍が広がる中、日銀は社債の大量購入や上場投資信託(ETF)の買い入れ拡大など緩和策を強化している。金融緩和により膨らんだ投資マネーが不動産市場に流入し、超低金利と相まって不動産価格を押し上げる構図だ。

このところの株価上昇も、不動産相場に大きく影響している。金融資産の増加による資産効果で、特に東京都心の住宅ニーズが高まっている。

コロナ感染が終息したとき、不動産価格はどうなるか

ではコロナ禍が終わった後の不動産価格はどうなるのか。中古マンションm²単価のグラフからわかるように、価格の上昇傾向はコロナ禍が始まる以前の19年にも続いていた。感染症の終息と同時に住宅需要も縮小してしまうと考えるのは不自然だ。

他方、現在の株価や長期金利の上昇は、コロナ禍終息後の経済の回復に対する市場の期待を反映しているものであり、実体経済に連動したものとは言えない。コロナ禍が終息したとしても、日銀は従来どおり「消費者物価上昇率2%の物価安定の目標」を達成するまで金融緩和を粛々と進めていくはずだ。

こうした状況を踏まえると、コロナ禍の終息後も不動産価格の上昇は続くと見るべきだろう。ただし、どのエリア・物件でも値上がりするというわけでは当然ない。

すでに述べたようにリモートワークの普及で近郊・郊外エリアの住宅ニーズが強まっており、その動きはコロナ後も続くと考えられる。ただし近郊・郊外エリアでは駅から徒歩10分を超えると一戸建てが市場の中心となる。そのためマンションについては駅徒歩10分以内で、専有面積75m²程度以上の広めの物件を中心に価格の上昇傾向が続くだろう。

一方、都心ではこれまでコロナ禍で購入を手控えていた層や、株高で手持ちの金融資産が膨らんだ富裕層が動き出すと見られる。これにより、都心の不動産価格がさらに上昇傾向を強める可能性が高い。

不動産の「売り時」「買い時」はいつか

不動産価格は都心・郊外ともに上昇傾向が続くと予測されるが、一時的な株価の下落などで価格が不安定になる懸念は払拭しきれない。例えば親から相続した共有財産を所有しているようなケースでは、価格が上昇傾向にあるタイミングで売却することを検討してもいいだろう。

不動産の購入については、価格の先高感を考慮すると早めが得策だろう。ただし、金融資産があり都心物件を希望しているのであれば別の考え方もある。

都心では不動産価格の上昇度合いが強まっているが、コロナ禍でダメージを受けた商業地の地価下落により、長期的には価格に抑制効果が働くとの見方もあるからだ。株価の動きを睨みながら、都心で希望条件に合う新築マンションが分譲されるのを待つという戦略もあり得るだろう。

中古マンション成約価格の推移

(公財)東日本不動産流通機構、(公社)中部圏不動産流通機構、(公社)近畿圏不動産流通機構、(公社)西日本不動産流通機構調べ

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