中古住宅売買が変わる! 宅建業法一部改正に伴うインスペクションがスタート

本年4月の土地建物取引業法一部改正により、売買契約前に建物のインスペクション(建物状況調査)を実施することが主流になりそうです。中古住宅取引の安心感醸成と流通活性化を目的とした法改正ですが、これから住まいを売却する方、これから住まいを購入する方にとって、留意すべきいくつかのポイントがあるのです。

宅建業法一部改正に伴うインスペクションがスタート

4月から契約前のインスペクションが当たり前に

これまで中古住宅を購入する場合、事前に建物コンディションのチェックも不十分なままに契約にのぞむということがほとんどでした。買主は建物や設備の劣化や不具合について、事前に確認せずに購入することはとても不安ですし、売主も後になってから、クレームをつけられる可能性がありました。

今回、平成30年4月1日施行の宅地建物取引業法の一部改正によって、不動産業者は、売主や買主に対してインスペクション(建物状況調査)をしたいかどうかについて、実質的に確認しなければならないことになったのです。正確には、売主から買主探しの依頼をされたとき、または、買主から住まい探しの依頼をされたときに、仲介業者はインスペクション業者のあっせん可否を示さなければならず、あっせんを可とするならば依頼者からの要望により、インスペクション業者を手配しなければならないのです。インスペクションを実施した場合は、重要事項説明時にインスペクション結果を不動産業者が買主に説明するとともに、契約締結時に、その内容について売主と買主が相互に確認し、不動産業者がその内容を書面で交付するというルールになったのです。

宅地建物取引業法の改正について

インスペクション(建物状況調査)とは何か

宅地建物取引業法で規定されたインスペクション(建物状況調査)とは、建築士など国の登録を受けた「既存住宅状況調査技術者」が建物の基礎や外壁のひび割れ、雨漏りなどの劣化や不具合の状況を「目視」や「計測」等により調査するものです。

基礎のひび割れ

基礎のひび割れ。水がコンクリート内部に浸透し鉄筋が錆びると、強度に影響も。

目地シーリング材の劣化によるひび割れ

目地シーリング材の劣化によるひび割れ。雨水が内部に浸透すると木部の腐食に繋がる可能性もある。

小屋裏収納天井の水染み

小屋裏収納天井の水染み。ケースにより雨漏りの可能性を調査する必要も。

アメリカでは1970年代頃から、契約前に建物を調査するようになった経緯があり、今では多くの取引においてインスペクションが実施されているそうです。

今回の宅地建物取引業法の一部改正は、中古住宅を安心して取引できる市場環境を作り、中古住宅の取引を活性化しようというのが目的です。ですから、インスペクションそのものが中立的でないとまずいのです。売主は不具合や欠陥を知らぬままに少しでも高く売りたいと考えるのが人情というものですし、不動産業者も契約しないと仲介手数料が得られないため同様に考えてしまいがちです。ですから、アメリカでは当初、建物を調査するインスペクターと不動産業者や売主との癒着が問題になった時期があり、現在では買主がインスペクションの依頼を行うのが一般的になっているそうです。日本では、売主も買主もインスペクションの依頼を行えるわけですが、国の登録を受けた設計士などの有資格者だけが、調査を行えるということで、こうした問題を回避しようとしています。もちろんあっせんを受けたからといって不動産業者に報酬を払う必要はありません。

売主のメリットと留意点

売主が事前にインスペクションを行うメリットの一つに、買主に対する安心感の醸成というメリットがあるでしょう。インスペクションをしている物件とそうでない物件では、市場での競争力が異なってくるでしょう。

もう一つは、瑕疵担保責任リスクの極小化です。住まいを売却した後、建物に不具合や欠陥が発見された場合、売主は買主に対して、責任を負わなければならないというのが一般的です。目視による調査とはいえ、専門家が事前に調査していれば、後から問題となるリスクは小さくできるはずです。

宅地建物取引業法で規定されたインスペクションは、瑕疵保険の調査と検査範囲が同じなので、検査結果に問題がなければ瑕疵保険に加入できます。こうなるともっと差別化が可能になります。特に築20年以上の建物(マンションなどの耐火建築物は25年以上の建物)であっても瑕疵保険に加入可能となれば、買主が負担する登録免許税や不動産取得税が軽減され、住宅ローン控除も使えるようになりますので、競争力はかなりアップするでしょう。 

なお、瑕疵保険を検討するのであれば、瑕疵保険の登録検査事業者で既存住宅状況調査技術者の資格を持っている方にインスペクションを依頼しましょう。これは二度手間にならないためです

問題なのは、瑕疵保険に加入できる中古住宅が、極めて少ないというのが実情ということ。ですから、お金のかかる検査をする前に、瑕疵保険に加入できる可能性がどの程度あるのか、瑕疵保険に加入できるために必要な修繕費用がどの程度になるのか、インスペクションに詳しい不動産業者またはインスペクターに事前調査をお願いしたほうがよいでしょう。

ちなみに、建物のコンディションによっては、インスペクションを実施しないで売るという選択肢もあります。例えば、建物付きで売却するものの、売主は建物の不具合や欠陥については責任を負わずに売るということもありますので、このような場合は、売主自らインスペクションを行う必要はありません。

買主のメリットと留意点

売主のメリットでご説明したように、インスペクションを実施すれば、実施していない物件に比べて安心感はあります。また、瑕疵保険に加入できるのであればより一層メリットは高まります。

ただし、これまでの取引慣行上、買主と不動産業者が媒介契約を締結するタイミングが契約日当日ということが多かったため、買主がインスペクションのあっせんを希望する場合、早い段階で媒介契約を締結しておく必要があるでしょう。購入申込をする段階で媒介契約の締結を不動産業者に求めるのがよいでしょう。

実際に既存住宅調査技術者がインスペクションを実施すると、「建物状況調査の結果の概要」という書類を作成します。この書面を売買契約直前の重要事項説明の場で、宅地建物取引士が説明することになっています。

この書面は、調査した部位の劣化の「有無」または「調査ができなかった」部位をチェックする書面であり、劣化の程度や修繕の必要性(今すぐ修繕すべきなのか、しばらく様子を見てもよいのか)や修繕費用などは一切語られません。

国土交通省は、「買主には結果の概要だけでなく、詳細な内容が記された報告書も渡すのが望ましい」としていますので、事前に不動産業者に報告書をもらったり、調査に同行させてもらった上で調査者からアドバイスを受けるなどの工夫が必要でしょう。

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