深刻化する空き家問題と、売却という選択肢

相続した住宅をそのままに放置していることなどを要因とした空き家の急増が社会問題になっています。一方で、コロナ禍でも影響を受けなかった住居系不動産を中心に、購入ニーズが高まっており、不動産の「売り時」といわれています。この記事では、空き家放置のリスクや不動産売却の注意点を解説します。

中古マンション

不動産を買いたい人が増えたときは、「売り時」

ここ数年、「空き家問題」が取り上げられ、ニュースなどで目にする機会が増えてきています。実際に空き家の割合は年々増加しています。総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は約849万戸と、5年前と比べ約29万戸増加。また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と過去最高を記録しました。

東京都でも空き家率は高く、10.6%となっています。少子高齢化が進む日本では、今後、空き家問題はより一層深刻化していくことが懸念されます。

一方で、新型コロナウイルスの流行により、住宅選びのポイントが変化しています。テレワークでの働き方が広がったことにより、多少駅から距離のある物件であっても、より広くて部屋数の多い「一戸建て」「郊外」を志向する不動産の購入ニーズが高まっています。

不動産売買では、買いたい人が増えたタイミングは、「売り時」です。そう考えると不動産の購入ニーズが高まっている今は不動産の売却のチャンスと考えてもいいでしょう。

空き家の放置はこんなにリスクがある

親元を離れて別に世帯を構えている人は、親が住んでいた住宅を相続してもなかなか引っ越してまで住むことはありません。親が生前愛用していた家具や調度品など、家族との思い出が残る場合には、家を取り壊したり、売却することに抵抗があり、空き家のまま放置してしまうケースが多いといいます。

しかし、空き家をそのまま放置すると次のようなリスクが生じます。

犯罪リスク
不審者による治安悪化、ごみの不法投棄、放火など

害獣、害虫の発生リスク
野良猫やネズミの住みつき、シロアリ被害など

景観の悪化リスク
老朽化した建物(倒壊の危険性)、草木の繁茂など

空き家問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。

解決策の一つは、空き家の状態にもよりますが、リフォームをして賃貸に出したり、シェアハウスや民泊として活用するなどの方法があります。

次に考えられるのは、空き家の売却です。売却すれば空き家の管理や心配ごとから解放されます。売却にあたり、自治体などが取り組む空き家を売却するサービスの「空き家バンク」の活用も考えられます。市街地の空き家ならともかく、郊外にある空き家の場合は買い手を探すのも簡単ではありません。売却したい空き家を登録しておけば、興味を持った人の連絡先を教えてもらうことができます。

次に具体的に空き家の売却を検討するタイミングについて考えてみます。

空き家の売却を検討するタイミング

親が元気なうちは実家で暮らせますが、老人ホームや病院に入ると住む人がいなくなるので残された実家をどうするか考えなければなりません。老人ホームの入居一時金や月額利用料が高額となる場合は、その資金に充てるために実家の売却が選択肢となります。

次は、親が亡くなり、不動産があっても現金がなくて相続税を支払うことができないケースです。相続税は親が亡くなって10カ月以内に納税しなければなりません。相続税の納付義務がある人で手もとに現金がない場合には、相続税の支払いのために実家の売却を検討するタイミングになります。

その他にも、空き家を所有している限り、固定資産税や火災保険料など維持費がかかってきます。また、空き家は人が住んでいる家に比べて劣化しやすく、修繕費が必要になる可能性もあり、これらの支払いが負担になる場合も、売却を検討するタイミングといえるでしょう。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

地元不動産会社だけを頼ってはいけない理由

それでは、不動産を売却するときの注意点をみていきましょう。

東京近郊に住むAさんはご両親が亡くなり、実家である戸建て住宅を相続しましたが、相続税の支払い原資(資金)を確保するため、売却を考えたそうです。当初、地元の不動産会社に依頼したのですが、なかなか売れませんでした。

物件が売れない理由には、いろいろな要因があります。今回のケースを調べてみると、不動産会社はAさんのご実家の売却の情報をインターネットなどにも掲載せず、他の不動産会社に情報を公開していませんでした。いわゆる「囲い込み」と呼ばれるもので、不動産会社が売主と買主双方の仲介を行い両方から仲介手数料を受け取ろうとすることです。買主の情報が限られることから販売期間が長期化するなどの影響を受ける可能性があります。このケースのように「地元の不動産会社だから大丈夫」と思い込んでしまうと、売却の可能性を狭めてしまうこともあるため注意が必要です。

また、不動産会社選びでチェックしたいのが売却実績です。周辺のエリアや売却予定の住宅と類似した物件の売却実績が豊富であれば、その地域の特性などを考えた適切な査定額を出してくれることはもちろん、法規制や条例など、地域によって異なる条件にも詳しいので、売主としては安心して任せることができます。

空き家の売却は、不動産仲介会社にすべて任せることができますが、より有利な条件で、より早く売却するためには、今回ご紹介した注意点を理解して、自分の不動産がどのような販売活動で売りに出されているかしっかり確認することが大切です。

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