全国 新築億ションの供給動向 2023
東京カンテイが全国における新築億ション住戸の供給戸数に関する最新調査を公表しました。
全国 新築億ション住戸の供給戸数
・全国での新築億ション住戸の累計供給戸数は2023年末時点で62,798戸
・40都道府県で分譲実績を確認最多は東京都の44,556戸、全国シェアの7割超を占める
価格高騰の長期化を受けて直近5年間の億ション供給戸数がバブル期の合計を上回るケースも
全国において新築分譲時の一戸価格が1億円以上のマンション(以下、億ション)を対象に住戸数を調査したところ、その累計供給戸数が2023年12月末時点で62,798戸に上ることがわかった。分譲実績が確認されたのは右表に掲出した40都道府県で、圏域別では首都圏が50,410戸、近畿圏が7,905戸、中部圏が2,047戸、地方圏が2,436戸となっており、2021年を境に地方圏が中部圏を上回り続けている。
都道府県別では東京都の44,556戸が最多で、その全国シェアは71.0%にも及んでいる。次点は同じく首都圏の神奈川県(4,925戸)で、1千戸以上を数えたエリアはいずれも三大都市圏に位置している。地方圏では中枢都市を有する福岡県(939戸)や北海道(449戸)が比較的多く、首都圏からのアクセスが良いリゾート地の軽井沢に高額マンションが再び供給されつつある長野県も263戸を数える。
新築億ション住戸の供給戸数において大きなボリュームゾーンを形成していたバブル期の5年間(1988年~1992年)と直近5年間(2019年~2023年)を比較してみると、東京都ではバブル期を大幅に上回っており、その数は当時の約2.4倍まで膨れ上がっている。東京都以外にも17道府県で当時を上回るボリュームを形成しており、中でも岡山県や沖縄県に至ってはバブル期に比べて10倍以上の数に達している。

2023年には全国で4,853戸が新たに供給、2017年にバブル期のピークを超えた東京都では大幅増
2023年に供給された新築億ションの住戸数は全国で4,853戸を数え、最も多かったのは東京都の4,039戸でその全国シェアは83.2%と前述した累計供給戸数のものを大きく上回る結果となった。東京都においては2017年にバブル期のピーク(1,769戸)を上回り、2019年には初めて2千戸の大台に到達、今回は2年ぶりに最高値を大幅に更新している。億ション住戸が販売されていた物件の内訳を見てみると、「三田ガーデンヒルズ」(総戸数1,002戸・14階建て)や「WORLD TOWER RESIDENCE」(同389戸・46階建て)、「パークタワー西新宿」(同470戸・40階建て)などをはじめ、100戸以上が供給された例が7物件にも上っていた。
なお、東京都以外で100戸以上の億ション住戸が供給されたケースは確認できなかったが、50戸以上の物件であれば大阪府の「シエリアタワー中之島」(総戸数364戸・46階建て)や「グランドメゾン北堀江レジデンス」(同178戸・19階建て)、福岡県の「グランドメゾン福岡 The Central Luxe」(同123戸・18階建て)なども該当してくる。

首都圏 新築億ションの供給動向
・東京都2023年の供給戸数は4,039戸、過去最多記録を大きく更新
・平均価格は1991年以来の2億円超え、坪単価は816.5万円とバブル期のピークに迫る
神奈川県が2年連続で100戸以上を記録したこともあり首都圏全体の供給戸数は増加傾向で推移
首都圏における新築億ション住戸の供給動向を見てみると、2021年を境に供給戸数は増加傾向で推移しており、2022年には初めて3千戸の大台に到達、翌2023年にはさらに増加して4,180戸を記録した。価格高騰の長期化に伴って周辺3県でも億ション住戸の供給が確認されており、神奈川県においては2022年に384戸、2023年に132戸と2年連続で100戸以上を記録している。ただ、億ション住戸の多くは東京都内で分譲された新築マンションから発生しており、首都圏全体に占めるシェアは概ね9割を超えている。
首都圏全体のデータに大きな影響を与える東京都の供給戸数を見てみると、バブル期の真っ只中だった1990年に記録した1,769戸をピークにその後は長い間下回ってきたが、2017年には最高値を僅かながら更新し、2019年には初めて2千戸の大台に達した。その後も供給戸数を伸ばす動きを見せており、2023年には4,039戸と一気に4千戸の大台まで急増している。ボリュームだけでなく価格水準も大きく押し上がっており、平均価格は20,436万円、坪単価は816.5万円と双方ともバブル期以来の高水準を示している。

直近10年間で新築億ション物件の平均価格が最も高かったのは「レフィール南麻布」の61,718万円
直近10年間(2014年~2023年)に新規分譲された億ション物件のうち、1物件あたりの平均価格が1億円を超える新築マンションを対象にランキングにしてみると、首都圏の第1位は平均価格が61,718万円の「レフィール南麻布」(港区)で、第9位の「ONE AVENUE一番町文人通り」(千代田区)までが3億円以上となっていた。2023年に新規分譲された億ションは3物件で、そのうち第6位の「グランドメゾンThe山手118」(横浜市中区)はトップ10の中で唯一東京23区以外からのランクインとなった。上位にランクインした物件のスペックを見ると、大半は小規模&低層タイプの高級レジデンスで、大規模物件やタワー物件に該当するものはなかった。また、平均専有面積については第8位の「ブランズ千代田富士見」(千代田区)を除いて軒並み100㎡を超えている。なお、歴代の平均価格ランキングを見てみると、第1位は「有栖川ヒルズ」(港区)の210,315万円で、上位30位まではいずれもバブル期に分譲された物件で占められている。

中部圏 新築億ションの供給動向
・愛知県2023年の供給戸数は55戸、大幅減少した前年から持ち直す
・平均価格は14,411万円と4年ぶりに1.5億円割れ、坪単価は460.5万円と下落傾向で推移
主な供給先は名古屋市内の高級住宅地や職住近接エリア、大規模タワー物件が戸数規模を押し上げ
中部圏における新築億ション住戸の供給動向を見てみると、2014年~2019年にかけては年間で50戸に達しないことも多かったが、2020年には69戸と5年ぶりに50戸を超え、翌2021年には132戸とほぼ倍増した。2022年には増加傾向も一服していたが、2023年には再び50戸を超えてきている。中部圏全体でのシェアの大半は愛知県で占められており、愛知県以外で新築億ション住戸が分譲されることはごく稀なケースで、岐阜県や三重県に至っては直近10年間において分譲実績が確認できたのはそれぞれ1年のみであった。
中部圏全体のデータに大きな影響を与える愛知県の供給戸数を見てみると、バブル期の真っ只中だった1990年に記録した88戸をピークにその後は長い間下回ってきたが、2021年には名古屋市中心部に立地する大規模タワー物件の高層階から高額住戸が数多く販売された影響もあり、初めて100戸の大台に達して最高値を大幅に更新する結果となった。物件の好立地化&ハイスペック化が進むにつれて坪単価は450万円を上回る状況が続いている。一方、平均専有面積は緩やかに縮小しつつあるが100㎡の大台は維持している。

直近10年間で新築億ション物件の平均価格が最も高かったのは「ヴィークハウス白壁」の16,418万円
直近10年間(2014年~2023年)に新規分譲された億ション物件のうち、1物件あたりの平均価格が1億円を超える新築マンションを対象にランキングにしてみると、中部圏の第1位は平均価格が16,418万円の「ヴィークハウス白壁」(名古屋市東区)であった。2023年に新規分譲された億ションは登場しておらず、直近のものでは2022年に分譲された「グランドメゾン The 池下向陽町」(名古屋市千種区)が第2位、「グランドメゾン The 覚王山向陽町」(名古屋市千種区)が第5位にそれぞれランクインしている。上位にランクインした物件の所在地はいずれも高級住宅地がある名古屋市の千種区や東区となっており、物件スペックは総じて小規模&低層タイプの高級レジデンスが並んでいる。また、平均専有面積については概ね100㎡前後の水準となっている。なお、歴代の平均価格ランキングを見てみると、第1位は「主税庵」(名古屋市東区)の40,506万円で、首都圏や近畿圏とは異なり直近10年間に新規分譲されたものが5物件ランクインしている。

近畿圏 新築億ションの供給動向
・大阪府2023年の供給戸数は255戸、前年の424戸から大きく減少
・平均価格は14,475万円と高水準にて安定推移、坪単価は470.6万円と2年連続で下落
近畿圏における新築億ション市場は大阪府・兵庫県・京都府の3府県で形成
近畿圏における新築億ション住戸の供給動向を見てみると、2016年~2020年にかけては200戸以上の規模でコンスタントに推移していたが、2021年を境に大阪府のみならず兵庫県や京都府においても供給戸数が大幅に増加するケースが出始めており、このことが圏域全体での供給規模の拡大につながったと考えられる。大阪府が占める億ション住戸のシェアは2016年に50%を突破、その後も概ね拡大傾向で推移して2022年には74.5%に達していた。翌2023年には58.5%まで縮小したが、依然として過半数を維持している。
近畿圏全体のデータに大きな影響を与える大阪府の供給戸数を見てみると、バブル期の真っ只中だった1990年に記録した526戸をピークにその後は長い間下回ってきたが、大阪市中心部で大規模タワー物件の開発が盛んに行われる中で高層階のプレミアム住戸が億ションとして販売されるケースが増加、2022年にはバブル期に次ぐ高水準を記録することとなった。物件の好立地化&ハイスペック化が進むにつれて坪単価が上昇基調であるのとは対照的に平均専有面積は概ね縮小傾向にあり、平均価格は1.5億円前後で安定推移している。

直近10年間で新築億ション物件の平均価格が最も高かったのは「芦屋大原町 HOUSE」の27,015万円
直近10年間(2014年~2023年)に新規分譲された億ション物件のうち、1物件あたりの平均価格が1億円を超える新築マンションを対象にランキングにしてみると、近畿圏の第1位は平均価格が27,015万円の「芦屋大原町HOUSE」(芦屋市)で、次点の「ブランズ芦屋ザ・レジデンス」(芦屋市)も2億円台で続いている。上位にランクインした物件の所在地は高級住宅地がある兵庫県の芦屋市や西宮市、京都市中心部が大半で、大阪府内に立地している物件は登場してきていない。物件のスペックを見ると、総じて小規模&低層タイプの高級レジデンスとなっている。また、平均専有面積については第10位の「ザ・京都レジデンス御所東」(京都市上京区)を除いて軒並み100㎡を超えている。
なお、歴代の平均価格ランキングを見てみると、第1位は「パレロワイヤル岡本」(神戸市東灘区)の70,003万円で、上位30位まではいずれもバブル期に分譲された物件で占められている。

当記事出典
当記事は株式会社東京カンテイ「新築億ションの供給動向 2023(2024年10月31日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。
・ | 本コンテンツに掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。 |
・ | 本コンテンツに掲載の情報は執筆時点のものです。また、本コンテンツは執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び当社が保証するものではありません。 |
・ | 本コンテンツは、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。 |
・ | 本コンテンツに掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。 |
・ | 本コンテンツに掲載の情報に関するご質問には執筆者及び当社はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。 |