都心3区だけが熱い?中古マンション市場
最近、高額帯の中古マンション価格の上昇が留まるところを知らないという話をよく聞きます。高額帯マンションと言えば、都心3区(千代田区、港区、中央区)などにあるマンションが思い浮かびます。今回は、地域別に中古マンション価格がどのように推移しているのか、他の地域とどの程度の違いが生じているのか、実際に調べてみることにしました。
分析方法
今回は、2018年1月から2024年8月までの都心3区、都心3区を除く東京都区部、東京都区部を除く東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の各地域における中古マンション価格の推移について見てみることにしました。分析に用いるデータは、公益財団法人東日本不動産流通機構に登録されている2018年1月から2024年8月までに取引された専有面積50㎡以上の一都三県の中古マンション成約データ17万1862件(都心3区:9,831件、都心3区を除く東京都区部:61,626件、東京都区部を除く東京都:17,792件、神奈川県:40,464件、 埼玉県:20,577件、千葉県:21,572件)です。価格指数は、マンションの専有面積あたりの成約単価について、最寄り駅からの距離や築年数、所在階、東京駅からの距離などを利用して品質調整しています。これを行うことによって、例えば築年数が古いものが多く取引されていたとしても、価格指数はその影響を受けない形となります。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
都心3区が大きく価格上昇
次のグラフは、2018年前期(2018年1月~6月)の指数を1とした価格指数の推移を示しています。2022年後期までは、各地域とも多少の差はあれ似たような価格上昇の推移となっていましたが、都心3区は2023年前期以降、他の地域とは価格上昇の度合がより強くなっていることが分かります。
先日、港区内でも山手線の内側にある築17年程度の中古マンションの販売を弊社で行いましたが、約60m²で1億1,000万円程度の価格で取引されました。筆者は、この売主様のために、2022年1月から弊社の価格推定アルゴリズムと成約データを用いて毎月推定するサービスを提供していましたが、当初の推定価格は7,800万円前後でした。実際に売れた価格は当時の1.4倍程度で、都心3区における2022年前期から2024年後期の上昇度合1.4倍と同じになっています。当時はここまで上昇するとは筆者も思ってはいませんでした。
所得の伸び率と不動産価格上昇のアンマッチ
一方、都心3区が2024年後期では1.9を超えているのに対して、他の地域は1.3強から1.6弱となっており、都心3区に比べると価格上昇の勢いは明らかに弱くなっています。2018年前期から2022年後期、2022年後期から2024年後期までの半年毎の平均価格上昇率(幾何平均)を算出した表を見ると、2018年前期から2022年後期については地域間の格差は少ないですが、2022年後期から2024年後期については、都心3区が7.2%/半年と突出しています。また、都区部を除く東京都や埼玉県との価格上昇率が低い状態に停まっていることが分かると思います。また、直近の千葉県は横ばい傾向が顕著です。
価格指数の6か月平均変化率 | ||
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2018年前期~2022年後期 | 2022年後期~2024年後期 | |
都心3区 | 4.2% | 7.2% |
都心3区を除く東京都区部 | 3.5% | 3.5% |
都区部を除く東京都 | 3.3% | 1.4% |
神奈川県 | 3.3% | 2.4% |
埼玉県 | 4.1% | 1.3% |
千葉県 | 3.8% | 2.8% |
このような結果になるのは、都心3区とそれ以外の地域における買主の層が大きく異なるからではないかと筆者は考えています。都心3区を購入する層は、パワーカップルのほかに、現金で購入できる層(親からの援助額が大きい人、相続対策の一環として、現金を値下がりしにくい都心部のマンションに置き換える方など)が多いようです。このユーザー層は、所得倍率(住宅価格÷年収)などはあまり関係ない層なのかもしれません。
所得の伸び率が、不動産価格の伸び率と変わらないのであれば、どの地域も同じように価格が上昇してもおかしくないのですが、「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)令和5年版のデータを見たところ、2018年を1とすると2023年の所得は1.14程度です。一方、中古マンション価格はこれ以上の価格上昇となっていますから、都心3区以外の地域の価格上昇率が伸び悩むのも当然かもしれません。
都心3区以外は、金利上昇が住宅価格に影響を与えるかもしれない
大手5銀行は2024年10月から、変動型の住宅ローンの基準金利を引き上げるとの報道もありましたので、今後、金利上昇が住宅価格に与える影響も気になるところです。しかし、都心3区の買い手は、資金的に余裕がある富裕層が多いこともあり、住宅ローン金利が多少上がっても市場には大きな影響を与えないのではないかと筆者は考えています。
一方、一般的なユーザーが中心となるマンション市場、特に、都心3区以外の地域については、金利上昇に敏感なユーザーが多い可能性があります。金利上昇の度合によると思いますが、それが背景となり周辺エリアから価格トレンドの変化が現れるかもしれません。
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