2023年 新築マンションPERの概況(首都圏)
東京カンテイ、首都圏における“2023年 新築マンションPER”を発表。
2023年の首都圏平均は26.36、集計開始後の最高値を2年連続で更新
マンションPERの最も低かった駅は「検見川浜」の16.09、最高駅は「麻布十番」の49.32
高騰する建築コストを販売価格に転嫁する動きは近郊~郊外エリアにも波及
2023年における新築マンションPER(=マンション価格が同じ駅勢圏のマンション賃料の何年分に相当するかを求めた値)の首都圏平均は26.36(対象129駅)と前年から0.69ポイント上昇し、集計開始後の最高値を2年連続で更新した。算出対象駅における新築マンションの平均価格(70m²換算)は前年比+2.6%の9,147万円と上昇したのに対して、分譲マンションの平均賃料(70m²換算)は-0.6%の280,615円と下落したことで回収に要する期間はさらに長期化する結果となった。
各駅のマンションPERを色分けした路線図を見ると、2023年において賃料見合いで新築マンション価格が比較的割安であることを示す青色や緑色の駅は基本的に東京都下や周辺3県の郊外エリアに分布しているがその数は少なく、特に青色の駅に関しては今回東京都下や横浜市以西のエリアから姿を消す形となった。一般的な勤労者による実需ニーズがメインの近郊~郊外エリアにおいても高騰する建築コストを販売価格に転嫁する動きは避けられなくなってきており、供給側もそれらの価格上昇についてこられる購入層に販売ターゲットを絞り込んで彼らが好む立地やスペックの物件に対して一段と注力してきている。
一方、首都圏平均をやや下回る赤色(24以上26未満)は17駅(シェア13.2%)で駅数・シェアともに最も大きく縮減した。特に、都心部やその周辺、城南~横浜エリアにかけては強い割高感を示す茶色にシフトした駅が多く見られた。首都圏平均を総じて上回る茶色(26以上)は63駅(同48.8%)と駅数・シェアともに大きく増大し、シェアに至っては半数を占める目前まで迫っている。
PERランキングの第1位は「検見川浜」、ランキング上位の7駅で駅近タワー物件からの高額賃料事例が発生
首都圏で最もマンションPERが低かった(割安感が強かった)駅は昨年に引き続きJR京葉線「検見川浜」の16.09で、賃料換算での回収期間は首都圏平均に比べて10年以上も短かった。同じく、千葉県の臨海エリアからは「海浜幕張」や「稲毛海岸」も例年通り登場してきている。事業集積地の千葉市中心部にも近いことから、これらのエリアで供給される新築マンションは都心部のみならず近隣エリアへ通勤する購入層などを含めた幅広い販売ターゲットを想定している。また、物件自体が最寄駅から徒歩10分以遠の臨海エリアで供給されるケースも多く、販売価格は首都圏の中でも値頃な水準となっている。ランキング上位20駅の中で駅近タワーマンションからの高額な賃料事例が発生していたのは「金町」「柏」「本厚木」「小岩」「津田沼」「勝どき」「聖蹟桜ヶ丘」の7駅で、「勝どき」や「聖蹟桜ヶ丘」以外は2023年に同物件の供給が行われていなかったこともあり、マンションPERは実態以上に低い数値となっている。
一方、最もマンションPERが高かった(割高感が強かった)駅は東京メトロ南北線「麻布十番」の49.32で、賃料換算では首都圏平均と比較して回収に23年近くも余計にかかる計算となる。平均坪単価が1千万円以上、平均専有面積が100m²以上の新築マンションが2つも分譲価格の対象物件となったために賃料見合いで最も割高な駅となってしまったわけだが、現時点では当該物件から賃料事例が発生しておらず、来年以降にこれらの物件から高額な賃料事例が発生すれば駅平均での割高感が多少改善されることが見込まれる。ちなみに、今回賃料事例が発生していた物件のうち専有面積が100m²以上の住戸に限った場合の平均賃料は874,992円で、これに基づいてマンションPERを算出すると25.72まで低下する。同様に、賃料事例が発生した物件よりも高スペックな新築マンションが供給された駅としては、「浜松町」や「西新宿五丁目」を挙げることができ、これらの駅に関してもやや過大となった割高感が今後是正されることが考えられる。ランキング下位20駅を見ると、東京23区以外からは神奈川県下の「元町・中華街」や「橋本」が登場してきているが、このうち「橋本」における対象物件の立地は分譲価格が駅近、募集賃料が駅遠にそれぞれ傾倒しており、物件バイアスの影響によって実態よりも割高感が増す結果となった。なお、最寄駅からの所要時間が同程度の物件に限定してマンションPERを算出した場合には首都圏平均をやや上回る26.69まで低下する。
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PERが前年から最も低下した駅は「自由が丘」、対象物件のバイアスが是正されて賃料水準が大幅上昇
前年に比べて最も割安感が強まった駅は東急東横線「自由が丘」で、賃料換算で回収期間が13年以上も短くなった。前回、募集賃料の対象物件のうち大半は最寄駅から徒歩10分以遠に立地していたが、今回は分譲価格の対象と同程度の立地条件である徒歩3分の物件から50万円前後の賃料事例が発生したことで昨年までの過大な割高感が是正される形となった。ただし、首都圏平均に比べればマンションPERは依然として大幅に上回っており、東京23区内でも有数の人気住宅地であるため賃料見合いで強気の価格設定が為されている状況に変わりはない。なお、月額賃料が10%以上も上昇した駅は半数以上の11駅(「自由が丘」「西新宿」「市ケ谷」「三軒茶屋」「武蔵新城」「松戸」「船橋」「両国」「大宮」「川口」「浦和」)にも及んでいるが、その多くは物件立地の駅近シフトや平均築年数の若返りによるものであった。
一方、前年から最も割高感が強まった駅はJR山手線「浜松町」で、回収までの期間が20年近くも長期化することとなった。月額賃料も上昇していたが、やはり新築マンションの価格水準が1億円以上も押し上がった影響は大きい。今回、分譲価格の対象となったのは「WORLD TOWER RESIDENCE」で、2023年に都心部で供給された新築マンションの中でも非常に高額な販売価格であったことから、「三田ガーデンヒルズ」と同様に世間の耳目を大いに集めていた。ランキング下位に登場する駅の中で月額賃料が大幅に下落しているケースは少なく、大半は前述した「浜松町」と同じく対象物件の駅近化や高スペック化によって新築マンション価格が上昇している。また、1億円以上の駅として東京23区に位置する駅が多くを占める中、今回は「横浜」も該当してきている。
新築マンションPERの算出方法と改定版における変更点について
分譲マンションの新築価格が、同じ駅勢圏の分譲マンション賃料の何年分に相当するかを求めた値。
当記事出典元
当記事は株式会社東京カンテイ「カンテイアイ特集(2024年5月1日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。
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