【2012年】公示地価の推移から読み取る 住宅地の価格のこれから

3月に、国土交通省が2012年の公示地価を発表しました。
過去10年間の軌跡を振り返りながら、住宅地をとりまく市況がどのように推移していくのか不動産データ分析の専門家に予想してもらいました。

公示地価の推移から読み取る 住宅地の価格のこれから 3月に、国土交通省が2012年の公示地価を発表しました。過去10年間の軌跡を振り返りながら、住宅地をとりまく市況がどのように推移していくのか不動産データ分析の専門家に予想してもらいました。

首都圏エリア

リーマン・ショックのダメージが抜けつつある

首都圏公示地価

「2006年9月に日銀がゼロ金利政策を解除したことで、マーケットでも日本経済は資産デフレ期を脱却したと判断されました。また、同時期に地価が底値にあると見た海外の投資家が、さかんに日本の不動産を買い求めました。こうして不動産取引が活性化し、ミニバブルがはじまったのです。しかし、2008年のリーマン・ショックによって景気は急速に悪化。地価も2009年に急落して以来、再びマイナス推移が続いています。ただ、東京23区の坪単価の推移でも分かるとおり、早いペースで価格調整が進んで下げ止まりの気配が出ています。ダメージが抜けつつある表れでしょう」(東京カンテイ中山さん・以下同)

経済復調の兆しと消費税の動向がポイント

3月には日経平均株価が2年ぶりに1万円台を回復するなど、経済情勢にも明るい兆しが見られます。

「経済が復調すれば、消費税が上がる前に不動産を購入しておこうとする動きも本格化していくと考えられますから、都心部や近郊では地価も底入れするでしょう。また、以前の地価には利便性が最も強く影響していましたが、東日本大震災以降は、安全性も重視されています。今後は、利便性と安全性のバランスのとれた土地の価格が上昇します」

名古屋エリア

調整が進む愛知県と、安定推移する岐阜県・三重県

名古屋圏も、ミニバブルによる上昇とリーマン・ショックによる下落という点では首都圏と似たような推移をたどっています。

名古屋圏 公示地価(住宅地)の都県別対前年比の推移

「大きな特徴は、名古屋市の坪単価の推移に見られます。2011年から2012年にかけてはわずかですが上昇していることが分かります。そして、名古屋市が地価をけん引している愛知県は、他の都府県と比べても早いペースで地価調整が進んでいると言えるでしょう」

一方、岐阜県と三重県では、2009年以降マイナス傾向が続いています。

「ただし、両県の10年間の推移を見ると分かるとおり、上がり方も下がり方も角度がゆるやかです。このことから、景気変動の影響を受けにくく、安定的に推移する傾向にあることがうかがえます」

名古屋市は再開発の動向に要注目

地価の回復基調が色濃い名古屋市ですが、今後は再開発のパフォーマンスにも注目したいところです。

「あまり注目されていなかった名東区や中村区などに開発の手が入っています。住みやすさや利便性の向上によって街の価値が上がれば、地価も上昇していくでしょう。一方、名古屋圏のその他のエリアは、今後も安定推移していく見通しです。景気の動向に過度に神経質になる必要はなく、基本的に自分が売買したいと思うタイミングで決断していいと思います」

関西エリア

価格調整の遅れから、ダメージの深さをうかがえる

10年間推移の山と谷のタイミングは首都圏や名古屋圏と同様ですが、プラスに転じている期間が短いのが関西圏の特徴です。

関西圏 公示地価(住宅地)の都県別対前年比の推移

「他の都市圏では2009年から下落率の縮小傾向が見られるのに対して、関西圏の3府県で同様の傾向を示し始めたのが2010年以降です。日本経済をけん引する企業が集まる首都圏や、トヨタ自動車を擁する名古屋圏に対して、関西圏では経済基盤を底上げする原動力となるような企業が少ないことが影響しています。2012年の対前年変動率は3府県ともマイナス1%台に縮小していますが、京都府と兵庫県については回復基調が表れています。ただ、大阪府の場合は梅田北ヤードの大規模再開発など、局所的なプラス要因が影響したためで、まだ本格回復とは言えない状態ですね」

経済の活性化や地価上昇には時間がかかりそう

上昇時も下落時も、首都圏なら東京都が、名古屋圏なら愛知県が突出していますが、関西圏の場合は3府県ともほぼ同じ数値で推移しています。

「マーケットでは、大阪市の中心部や阪神間の底は見えたと判断する向きもあります。現在、大阪都構想などが話題になっていますが、改革の道筋が見えてこないと、企業も様子をうかがってしまいます。そして、地元経済が活性化しなければ地価も上がりません。関西圏全体が地価上昇に転じるにはまだ時間がかかるでしょう。これから購入する方は、じっくり検討できるいい機会かもしれません」

※当記事の掲載データは、すべて国土交通省が公開している公示地価をもとに作成したものです。

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