【2010年】公示地価から読みとる これからどうなる?住宅地価動向
厳しい経済情勢に改善の兆しが見られないなか、3月に公示地価が発表されました。
経済動向と密接な関わりがある住宅地価は今後どのように推移していくのでしょうか。
現在にいたるまでの動向をもとに、これからの見通しを専門家に予測していただきました。
首都圏エリア
東京都に見られる下落縮小傾向がカギ
景気低迷の影響を受けて、地価は2005年まで毎年前年を下回る状況が続きました。しかし、経済情勢が回復しはじめた2006年からは地価が前年を上回るとともにミニバブルが始まり、2007年と2008年には連続して前年を大きく上回る結果に。これが、リーマンショックに端を発する金融危機で再び前年を下回ったのが2009年でした。
「2010年も、2009年に引き続いて1都3県すべてで下落しており、日本経済が不況から脱却できていない現状が浮き彫りになっています。ここで注目したいのが、ミニバブル期とその後の東京都の対前年比です。他の3県に比べて、上げ幅も下げ幅も大きくなっていますよね。それだけ、東京が全国に先駆けて経済情勢に敏感に反応しているといえます。」(東京カンテイ中山さん、以下同)
自分のタイミングで売り買いできるように
東京23区の坪単価の推移をみると、2008年のピークを挟んで2年連続下落しています。しかし、2年連続で下がったとはいえ上昇を始めた2006年よりも高値を維持しています。
「昨今の経済情勢を見ていても、再び急上昇に転じるような激変はまずないといえます。東京23区の坪単価を見ても、2008年から2009年にかけては-8.4%で2009年から2010年にかけては-7.3%と、下落率に縮小傾向が出始めています。このことからも、今後は2006年の水準に向かって緩やかな下降を続けるか、このまま安定するかのどちらかといえるでしょう。いずれにしても、売り買いする際にタイミングをよく見極めないと大損をするといった急変はまず起こらない。つまり、世間の動向を気にせず、自分のタイミングで売り買いの判断をしていい時期が続くと予想されます」
名古屋エリア
ここ10年は首都圏に似たカーブ
好景気にわいた2006年から2008年にかけては地価が前年を上回る状況が続き、2009年に大幅下落。名古屋圏の対前年比は、首都圏と似た形で推移しています。
「名古屋が地元であるトヨタの動向が色濃く反映されるエリアです。事実、トヨタの業績が絶好調だった2007年から2008年にかけての商業地の地価上昇率は全国トップでしたが、住宅地の地価もこれに追随していました」
リーマンショックは自動車産業にも大きな打撃となりましたが、その影響からなのか2009年の地価は前年を下回る結果となりました。また、2010年の対前年比も引き続きマイナスになっています。
「ただし、愛知県における地価の対前年比は-2.9%から-2.5%になっていて、東京都と同様、下落率の縮小傾向が見られます。これは、エコカーポイントなどの経済政策に後押しされて、トヨタの業績が回復しつつあることが地価にも反映されている表れといえるでしょう。つまり、今後の名古屋圏の地価は安定していく方向にあるといえます」
“正”のスパイラルが期待できる
名古屋市の坪単価推移を見ると、東京23区に比べて上下の幅が少なく、動きがゆるやかであることがわかります。
「もともと地価の動向が安定していた地域なんですね。政府は、経済対策としてエコカーポイントの継続を決めていますから、当面はトヨタの業績も順調に推移することが予想されます。地場の経済基盤であるトヨタが安定していれば、地価の安定傾向も続くはず。消費者としては気に入った物件を見つけたら、安心して購入に踏み切れる状況です。購入しようとする人が増えれば、売る側も無理に値引きする必要がなくなる。つまり、市場の安定化に向けて“正”のスパイラルが生まれることが期待できるのです。今後は当面、売りやすく買いやすい状況が続くと思われます」
関西エリア
景気低迷の影響が最も深刻なエリア
大阪市の坪単価の推移を見ると、名古屋市の坪単価推移と同じように、2006年から2008年にかけてのミニバブル期を挟んだ上昇率・下落率は小さくなっています。ただし、関西圏が名古屋圏と異なるのは、地価の下落が2009年に引き続いて2010年も拡大している点です。
「首都圏では東京都が、名古屋圏では愛知県が、各々2010年に下落率の縮小傾向を見せていますが、関西圏では大阪府・京都府・兵庫県そろって下落率が拡大しています。大阪府では、転入してくる人口よりも転出していく人口のほうが上まわる転出超過が続いていることからも、3エリアのなかでは金融危機の打撃が最も深刻だったといえるでしょう。日本経済の中心としての首都圏、トヨタという大企業に支えられる名古屋圏がわずかながら復調傾向を見せているのに対して、関西圏では地域経済がまだ軟調な状況です。その事実が露呈してしまった形ですね」
継続中の大規模再開発に期待
先述のとおり、関西圏では地価の下落傾向が続くように見えますが、関西特有の明るい材料もあります。
「2010年の大阪市の坪単価は、この10年で最も安くなっています。買い控える消費者が多ければ、売る側は価格を下げる。下がったのを見れば、まだ下がるのではと推測して様子を見るという具合で、関西圏が元気をとりもどすのにはもうしばらく時間がかかりそうです。ただし、明るい材料もあります。大阪駅周辺では、梅田北ヤードの大規模再開発がピークを迎えつつあります。このようなビッグプロジェクトが動いているのは、関西圏くらいです。梅田エリアの再開発の成否と周辺エリアへの波及の有無が、今後の近畿経済と地価動向の浮沈を決するといってもいいでしょう」
※当記事の掲載データは、すべて国土交通省が公開している公示地価をもとに作成したものです。
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