賃貸中より空室のほうが高く売れるって本当?

「同じマンションなら賃貸中の物件より空室のほうが高く売れる」という話をよく聞きます。筆者も、賃貸中だった分譲マンションを、賃借人の退去をきっかけに売りたいという依頼をよく受けます。最近では、都区部のマンション価格がかなり高騰しているので、退去を機に売却を検討する方も増えているようです。
不動産業者の間でも、空室のほうが高く売れるという認識があるようですが、実際に本当なのか今回調べてみることにしました。

賃貸中より空室のほうが高く売れるって本当?


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調査方法

まずは、公益財団法人東日本不動産流通機構の中古マンション成約事例(東京23区内で、2021年1月~2023年8月に成約した事例34,194件(うち賃貸中物件の成約事例4,017件)を使用して調査します。

成約事例には、成約価格だけでなく、そのマンションの特性(属性)、例えば、最寄り駅からの距離、築年数、専有面積、所在階、所在する区、成約年、賃貸中か否かといったデータも含まれています。成約価格はこうした特性によって上下しますので、これらが全て同じであったと仮定して、「賃貸中か否か」という特徴だけで見た場合、どの程度の差が生じているかということを分析します。いわゆる「ヘドニックアプローチ(※)」と呼ばれる方法で、品質(特徴)を調整した上で分析するという方法です。

この方法で分析した結果、空室物件のほうが平均で11.1%高いということが分かりました。

※ヘドニックアプローチ
商品の価格と特性に関する大量のデータから計量的手法を用いて特性ごとの金額換算値を求め、品質調整を行う手法。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

築15年以内のファミリータイプで検証

上述の分析では、投資用のワンルームマンションやリノベーション済の中古マンションなどが含まれます。成約事例をみると、専有面積43m²以下のマンションが全体の25%、築年数18年超は全体の半分、32年超は25%程度含まれていました。

ワンルームマンションは、市場から投資用として捉えられているケースが多く、賃貸中物件と空室物件の適切な比較ができないと考えられますので、分析対象から外したほうが良さそうです。
また、築年数の古い空室マンションには、リノベーション済の物件が多いこと、あるいは、築20年くらいでリフォームして住み続け、25年目に買い替えで売却するといったケースも散見されます。リノベーションなど一定の手を加えたマンションは、手を加える前に比べて付加価値が付きますので、手を加えていない物件よりも高く売れます。ですから、古いマンションを含めて分析すると、空室物件のほうが高くなる傾向が強くなってしまう可能性があります。こうした観点から、築年数の古いマンションは分析対象から除外したほうが良さそうです。

以上から、適切な分析対象は、DINKSタイプあるいはファミリータイプのマンション(専有面積50m²以上80m²以下)、築年数を15年以内として分析してみます。

空室マンションは約6.7%も高く売れている

上記の条件で抽出した中古マンション成約事例は9,275件(うち賃貸中物件341件)です。分析結果は、空室物件のほうが平均で6.7%高いということが分かりました。先ほど計算した結果(11.1%)よりかなり低い値となっています。これは前述したように、古いマンションにはリノベーションなどが施されるケースが多いことが原因と考えられます。今回の分析では、築15年以内と制約を課しているので、大掛かりなリノベーションを行っている物件はかなり少ないと考えられ、賃貸中の物件と空室物件の差を適切に表しているのではないかと筆者は考えています。

空室のほうが高く売れるのは何故か?

ところで、何故、空室のほうが高く売れるのでしょうか?よく聞くのは、「他人の権利(賃借権)が付帯しているから、賃貸中のほうが安くなる」という意見です。賃貸している代わりに、賃料収入が入ってくるというメリットがあります。もし、賃料収入を得ることと、自分がそこに住むことが等価であれば、賃貸中の物件も空室物件も等価となるはずで、この意見は間違っているということになりますが、今回の分析結果からすると、この意見は間違ってはいないようです。

また、投資市場においては、自らが使用するわけではなく、単純に投資対効果を考えるシビアな世界ですが、自己使用をする住まいの売買市場では、そこまでシビアな考え方をしない分、価格が上振れしやすいという考え方もあります。
もう一つは、空室物件は室内を確認してから購入できますが、賃貸中の物件はそれができないという問題があり、両者の価格差は保険料的な意味合いがあるという考え方もあります。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

価格高騰の昨今、退去後の売却検討は合理的

今回の分析では、築15年以内の物件を中心に解説しましたが、築年数が古いマンションでもファミリータイプであれば今回の分析結果と同様、空室のほうが比較的高く売れると思います。中古マンション市場は価格に天井感が出てきたという意見が多くなってきていますので、賃貸中のマンションで賃借人から解約通知が出て、空室になる可能性があるなら、売却を検討するのは合理的かもしれません。

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