住まいの税金ガイド

譲渡所得にかかる税金のしくみ

  • 所有期間が5年を超えるかどうかで税率を区分
    (譲渡年1月1日時点)
  • 収入から必要経費と特別控除を差し引いた譲渡所得に課税

土地建物等の譲渡所得は、事業所得や給与所得などの他の所得とは別に計算します(申告分離課税)。
税額は、下記で述べる譲渡所得金額に対して次の税率を乗じて求めます。譲渡年の1月1日時点における所有期間が5年以下のもの(短期譲渡所得)は概ね税率が高く、5年超のもの(長期譲渡所得)は税率が低くなります。なお、一定の要件を満たす譲渡には、軽減税率が設けられています。

譲渡所得にかかる税金の計算式

譲渡所得金額 × 税率 税額
⬇︎
譲渡年の1月1日時点の所有期間 原則 特例 軽減税率
▶︎
5年以下
短期譲渡所得
▶︎ 30.63%
(所得税)
▶︎ 国、地方公共団体等に対する土地等の譲渡
(注)
独立行政法人都市再生機構、土地開発公社、地方住宅供給公社等及び一定の法人への譲渡で法人が業務を行うために直接必要であると認められるもの並びに収用交換等による譲渡を含みます。
15.315%(所得税)
5%(住民税)
9%
(住民税)
5年超
長期譲渡所得
▶︎ 15.315%
(所得税)
▶︎ 優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡 10.21%(所得税)
4%(住民税)
(注)
2,000万円以下の部分
5%
(住民税)
▶︎
10年超
マイホーム譲渡の軽減税率
マイホーム譲渡の軽減税率参照)
10.21%(所得税)
4%(住民税)
(注)
6,000万円以下の部分
(注)
所得税には2.1%の復興特別所得税を含みます。

【所有期間の判定】

取得日及び譲渡日は、原則として、資産の引渡しがあった日をいいますが、売買契約等の効力発生日(新築マンションや請負の注文住宅などは除く)とすることも認められています。なお、相続、贈与などによる取得については、原則として、被相続人等の取得日が引き継がれます。
税務上の所有期間は、取得日の翌日から起算し、譲渡年の1月1日時点で判定するため、実際の所有期間とは異なります。

令和5年中の譲渡の場合
平29.12.31以前に取得 平30.1.1以後に取得
長期譲渡所得 短期譲渡所得

譲渡所得の計算方法

譲渡所得の金額は、土地建物等を売却した収入金額そのものではなく、収入金額(土地や建物の売却代金など)から必要経費として取得費及び譲渡費用を差し引いて算出した譲渡益から、特別控除などを控除して計算します。

譲渡所得の計算式

譲渡益
収入金額 ( 取得費 譲渡費用 ) 特別控除 譲渡所得金額

取得費

取得費とは、譲渡資産の取得価額(土地や建物の購入代金)と取得後の設備費、改良費等の合計額をいいます。店舗・賃貸住宅などの業務用建物の場合(マイホームなどの非業務用建物の場合はマイホーム買替えにかかる税金参照)は、譲渡時までの減価償却費の累計額を、この合計額から差し引いたものが取得費となります。
なお、先祖代々の土地などで取得費が不明な場合や、実際の取得費が収入金額の5%を下回る場合などには、収入金額の5%を「概算取得費」とすることができます。また、相続財産を一定期間内に譲渡した場合は、譲渡資産にかかる相続税のうち一定の額を取得費に加算できる特例が設けられています(取得費加算の特例参照)。

取得費の例(事業所得などの必要経費に算入されたものは含まない)

  • 購入代金、建築代金
  • 取得時の仲介手数料
  • 建物付土地を購入した場合の立退料、建物の解体費用
  • 登録免許税、不動産取得税、印紙税などの税金
    (これらの税金が取得費となるのは、マイホームなどの非業務用資産に限る。なお、固定資産税・都市計画税は取得費とならない)
  • 土地購入後の設備費、改良費
  • 土地購入時の造成費用、測量費
  • 借入金の利子(土地や建物を購入するための借入金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子)
〔建物の場合〕
減価償却費の累計額
取得費
取得費がわからない場合(先祖代々の土地など) 取得費が収入金額の5%を下回る場合
概算取得費の特例 ▶︎
収入金額 × 5% 取得費(概算取得費)
相続財産を一定期間内に譲渡した場合取得費加算の特例参照)
取得費加算の特例 ▶︎
実際の取得費(又は概算取得費) 一定の相続税額 取得費

譲渡費用

譲渡費用とは、土地や建物などを売るために直接かかった費用をいいます。譲渡費用の主なものは次のとおりです。

譲渡費用の例

  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料、売主負担の印紙税、広告料、調査測量費、交渉費など
  • 貸家を売るための借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地を売るための建物の解体費用とその建物の損失額
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料等

特別控除

一定の要件を満たす譲渡(マイホームや空き家の譲渡、収用等による譲渡など)については、特例の適用を受けることで、譲渡所得から100万円~5,000万円を特別控除することができます(マイホーム買替えにかかる税金その他の譲渡所得の特例空き家の譲渡所得の特例参照)。

土地建物の譲渡で赤字になったら? ~損益通算~

土地建物の譲渡損は、同年中の他の土地建物の譲渡所得から控除することができますが、事業所得や給与所得などの他の所得との損益通算や繰越控除は認められません。ただし、一定のマイホームの譲渡に限り、特例により他の所得との損益通算及び繰越控除が可能です(マイホーム買替えの損失の繰越控除マイホームの譲渡損失の繰越控除参照)。

譲渡所得にかかる税額は?

3年前に先祖代々の土地に賃貸住宅を建築しましたが、令和5年中に土地建物を譲渡しました。

内訳 収入金額 購入代金 減価償却費 譲渡費用 特別控除
土地 1億円 不明 300万円 適用なし
建物 5,000万円 6,000万円 600万円 200万円 適用なし

土地の譲渡所得は?

収入金額 概算取得費 譲渡費用 譲渡益(長期譲渡所得)
1億円 { ( 1億円 × 5% ) 300万円 } 9,200 万円

建物の譲渡所得は?

収入金額 取得費(購入代金等-減価償却費) 譲渡費用 譲渡損(短期譲渡所得)
5,000万円 { ( 6,000万円 600万円 ) 200万円 } △600万円
収入金額 取得費(購入代金等-減価償却費) 譲渡費用
5,000万円 { ( 6,000万円 600万円 ) 200万円 }
譲渡損(短期譲渡所得)
△600万円

譲渡所得の損益通算

土地の長期譲渡所得 建物の譲渡損(短期) 課税長期譲渡所得
9,200万円 600万円 8,600万円

税額は?

課税長期譲渡所得8,600万円 × 税率20.315%
税額 1,747900

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このガイドについて

このガイドは、株式会社 清文社の「2023年版 土地建物の税金ガイド」を元に作成しており、内容は2023年(令和5年)4月1日現在の法令等にもとづいております。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
税金は複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士など専門家にご相談ください。
(注)本サイトの計算例は、原則、例示取引にかかる税額を便宜的に計算しており、必ずしも最終的な納付税額ではないことから端数処理を考慮していない場合があります。
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監修:新谷達也、塚本和美 企画・制作:清文社