相続税・贈与税ガイド

6. 節税の知恵Q&A

1. 生前贈与の知恵

一般的には、贈与税は相続税より税負担が高くなりますが、事前に相続税を算出して、税の負担額を想定し、積極的に贈与しておくのも一法です。

私は、75歳で現在、相続税評価額が5億円の資産を所有しています。将来、相続するのは娘(45歳)1人(孫(21歳)1人)しかいません。贈与していったほうがよいか、それとも相続で引き継いだほうがよいでしょうか。
現在の相続税は、

そこで、現行のままなら約38%以下の税負担の贈与であれば得といえます。
たとえば、今年3,000万円相当を贈与すると、

つまり、3,000万円の贈与では34.52%となって相続税の税負担よりも安いといえます。さらに、3,000万円を娘さんとお孫さんの2人に分けるともっと税金は軽くなります(贈与は毎年、利用できます)。また、将来のためお孫さんを養子にしておくことも考えられます。

贈与税の「相続時精算課税」制度の上手な利用法を教えてください。
この制度はその年の1月1日現在で60歳以上の親や祖父母など(一定のマイホーム資金に限り、平成33年12月31日までこの年齢制限がない)がその年の1月1日現在で20歳以上の子や孫などに生前贈与をしても当面の贈与税は軽くして、相続時に生前贈与された贈与資産を相続財産とみなして精算課税する制度です。2,500万円までの贈与は非課税となり、これを超える金額は一律20%の贈与税がかかりますが、相続時に相続税から差し引くことができます。贈与財産の種類は制限がなく、何回も贈与することが可能です。ただしこの制度は基礎控除の年間110万円が使える通常の贈与税と選択適用になっていて、一度「相続時精算課税」制度を適用すると、その親などからのその後の贈与もすべてこの制度が対象となります。なお、この制度は親などごとに適用できますから、将来の相続税を試算して適用の是非を判断する必要がありますので、上手な利用法として次の2点をあげておきます。

1. 親や祖父母などともに将来の相続税がそれほど心配のないとき

つまり、相続財産が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)前後のときはこの制度を利用した方が良いでしょう(1.相続税とは 参照)。

2. 収益性のあるアパート、貸ビル、賃貸マンションなどの贈与

たとえば親などが5,000万円の予算でアパートを建て、満室状態で贈与(敷金相当の現金を含めて)すると

アパート評価額と「相続時精算課税」制度の特別控除額との比較 アパート評価額と「相続時精算課税」制度の特別控除額との比較

となり贈与税はゼロとなります。この方法による節税効果は5,000万円の現金が2,100万円のアパートへ転化するとともに、その収益が子などの所得となるので所得の分散による相続税対策ともなります。

2. 資産転換の知恵-A

金融資産より不動産の評価のほうが低く、土地よりも建物のほうが評価が上昇しないなど考慮して転換していくやり方です。

私は金融資産を3億円所有していますが、そろそろ相続税対策を立てたいと考えています。何かよい方法があるでしょうか。
土地を購入、賃貸住宅を建設しますと(その間に地価や評価額が上昇しなかったものと仮定)、評価額は下記のように1億3,950万円(3億円-1億6,050万円)も低くなります。
資産転換の知恵-A 資産転換の知恵-A

3. 資産転換の知恵-B

前項A同様金融資産より不動産の評価のほうが低く、なおかつ「小規模宅地の特例」を利用する節税効果の高い方法です。

私は現在、賃貸住宅に居住しています。金融資産が5億円あり、不動産は一切所有していません。一人娘と孫娘が同居を希望しています。将来の相続税のことを考え、2億円の2世帯住宅(注)を建築するつもりです。どのようなメリットがありますか。
土地や建物は相続の際の評価が金融資産より低く評価され有利です。さらに娘さんは同居することになるので土地部分に対して「小規模宅地の特例」が適用され80%もの評価減を受けることができます。それでは2億円の住宅の内訳は―

土地250m²⇒1億5,000万円
建物200m²⇒5,000万円とすると

  • 土地250m²

    1億5,000万円⇒1億1,250万円

  • 建物200m²

    5,000万円⇒3,000万円

と評価され低くなります。同居した娘さんが相続すると「小規模宅地の特例」(4.相続税の評価方法「2.小規模宅地の特例」 参照)が適用され80%も評価減されます。したがって、

  • 土地の評価は1億1,250万円×0.2⇒2,250万円となり、1億5,000万円の土地が相続時には2,250万円まで下がり、大変に有利です。
(注)
4.相続税の評価方法「【1】特定居住用宅地等」の(ホ) 参照

4. 土地活用の知恵(債務の活用)

土地活用には自己開発、等価交換、土地信託、事業受託などの手法があります。それぞれ土地活用と相続税対策として優れていますが、ここでは事業受託方式の一つをとりあげてみましょう。

A社からビルの建設資金はすべて保証金の差し入れによってまかない、賃貸収入も一括借り上げで保証するという話がきています。ビルの建設費は10億円ぐらいで、330m²の土地の相続税評価も更地で10億円ぐらいといわれています。ビル建設によって相続税はどのように変わるのでしょうか?保証金はどう評価されますか?
なお、この土地の借地権割合は80%です。
まず、預け入れ保証金は借入金と同様に、相続税の計算上、債務控除の対象になります。したがって、10億円の評価資産がビル建設と預り保証金によって、1億8,000万円の評価にまで、大幅に下がります。
この預け入れ保証金は、借入金と異なり債務が減らないため(返済するケースも)、相続税対策の効果が薄れない利点があります。なお、小規模宅地の特例を適用すると、さらに効果は大きくなります。
土地活用の知恵(債務の活用) 土地活用の知恵(債務の活用)

5. 「定期借地権」活用の知恵

「定期借地権」とは、一定の期間が経過しますと、貸した土地が必ず地主に返還される借地システムで、契約の更新は一切認められません。このため「土地を売却したくない」「何か土地の有効活用をはかりたい」という地主にとっては、効果的な方法といえます。また、一時金(前払賃料)について、税制上、地主、借地人双方にメリットが受けられます(注)。

郊外に広い土地を遊ばせているので、「定期借地権」で有効活用をはかりたいのですが、その仕組みと相続税上の評価はどのようになっていますか。
「定期借地権」には「一般定期借地権」「建物譲渡特約付き借地権」「事業用借地権」の3種類のタイプがあり、それぞれの活用方法は下表のようになります。
相続税評価については「定期借地権」が設定されている貸宅地の場合は、下表の経過年数に応じて、相続税評価額に一定の評価減が認められます。
例えば50年契約の「一般定期借地権」が設定されている土地に、20年経過した後、相続が発生しますと、仮にその土地の相続税評価額が5,000万円の場合、評価額は5,000万円-5,000万円×20%=4,000万円となります。なお、この評価法のほかに「定期借地権」の逓減率を使う方法もあります。
定期借地権の残存期間 評価減
15年を超えるもの20%
10年超~15年以下15%
5年超~10年以下10%
5年以下5%

一般定期借地権の設定されている貸宅地の相続税評価の特例

50年以上、設定契約される「一般定期借地権」については、上表の評価によらずに、次の有利な方式が選択できます(ただし、借地権割合A、B地域、借地権の取引慣行のない地域、及び同族会社などとの取引では適用になりません)。

一般定期借地権の設定されている貸宅地の相続税評価額の計算式
  • 路線価の借地権割合C70%→底地割合55%
  • 路線価の借地権割合D60%→底地割合60%
  • 路線価の借地権割合E50%→底地割合65%
  • 路線価の借地権割合F40%→底地割合70%
  • 路線価の借地権割合G30%→底地割合75%

たとえば一般定期借地権50年で5年経過後に相続が発生したケース(土地評価1億円、借地権割合70%)では基準年利率を0.25%とすると、
1億円-1億円×(1-55%)×42.511(45年の)/46.946(50年の)≒5,925万円
となり更地評価より4,075万円安く評価されます。

3タイプの定期借地権の内容

一般定期借地権 建物譲渡特約付き借地権 事業用借地権
用途建売住宅、マンション、社宅・寮、賃貸住宅建売住宅、マンション、社宅・寮、賃貸住宅 スーパー、レストラン、パチンコなど
存続期間50年以上30年以上10年以上50年未満
契約方法書面書面または口頭 公正証書
法定更新なしなしなし
利用目的制約なし制約なし事業用のみ
建物譲渡特約 なしありなし
(注)
定期借地権の設定時に収受される一時金(一括払いされた賃料の一部または全部)を、契約書で賃料の前払いである旨を明記すると、一時金を受け取った地主は「前受収益」、支払った借地人は「前払費用」として処理できるので、借地期間に応じて毎年、「収益」、「費用」が計上できます。

このガイドについて

このガイドは平成30年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
平成25年分から所得税のほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されますが、計算の都合上これを除外している場合があります。
平成31年10月1日より消費税が10%にアップされる予定ですが、経済情勢などにより延期される可能性があります。
相続税・贈与税には複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士・弁護士など専門家にご相談ください。

執筆・監修 

税理士/中村 節弥

 

税理士/大田 貴広

編集・制作

/株式会社サンビー企画

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