ライフステージ・スタイル別にみる賢い資産形成&防衛術

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<シニア向け>「人生100年時代」に油断は禁物! 相続の準備はお早めに

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  • シニア

公開日:2020/9/18

シニア

「人生100年時代」と言われています。65歳となり、そろそろ相続対策も考えたほうがいいと思いますが、いつから始めればいいのでしょうか。認知症も心配です。どんな相続対策をすればいいのでしょうか。

今回のポイント

  • 日本人の健康寿命は、男性72歳、女性74歳。相続対策準備はお早めに。
  • 認知症になると相続対策ができなくなる。税金対策と相続トラブル回避を考えて。

健康寿命から考える「本当の相続準備期間」

長生きは良いことです。

しかし、相続や贈与に関しては手放しでは喜べません。

例えば、介護が必要となると、相続対策のために動き回ることが困難になります。

認知症にかかった場合、相続に関する適切な判断ができなくなる可能性が高くなります。

内閣府の調査(令和元年版高齢社会白書(全体版))によると、65歳以上で要介護となる主な原因は認知症が最多です。年齢別では、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.4%、要介護の認定を受けた人が2.9%ですが、75歳以上になると要支援認定を受けた人は8.8%、要介護認定を受けた人は23.3%に急増します。

「人生100年時代」といわれますが、早ければ70代で要支援・要介護になってしまいます。

「認知症 になるまでに決めればいい」「まだ十分に時間の余裕がある」と考えるのは、実はとてもリスクがあるのです。

では、いつまでに準備すれば良いのでしょうか。

その目安の1つとなるのが「健康寿命」です。

健康寿命は平均寿命とは異なり、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」(WHO[世界保健機関]の定義)をいいます。つまり、寝たきりになったり介護を受けたりせずに日常生活を送れる期間が健康寿命です。

日本人の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳です(厚生労働省発表・2016年)。

あくまでも平均値ですが、これくらいの年齢までを目安として相続対策を準備するのが良いといえるでしょう。

もし認知症になってしまったら…相続対策はできない?

高齢による様々な疾病の中でも、相続対策ではとくに認知症に注意が必要です。

認知症と診断されると、正しい判断能力がないと判定され、預貯金が引き出せなくなる場合もあります。

お金が下ろせなければ生前贈与もできません。療養や介護の費用も引き出せず、不動産を持っている場合、メンテナンス、リフォーム、納税のお金を引き出すことも難しくなります。

また、認知症と診断された状態で行う契約行為は法律上無効となる可能性があります。

その場合、所有する不動産や株を処分することができなくなり、相続対策として新たに不動産などを購入することもできず、預金、不動産、株などの資産が凍結状態となってしまいます。

2017年末時点で認知症患者の保有資産は143兆円ほどあり、その額は2030年度には1.5倍の215兆円にもなるといわれています(出典:「認知症患者の金融資産 200 兆円の未来」平成30年度 第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 試算)。

認知症などで判断能力が不十分となった場合には成年後見制度を利用し、後見人等に資産を管理してもらうことができます。

成年後見制度は、親族、弁護士、司法書士などが後見人となり、当人の判断を補います。後見人が財産管理や契約行為を行えるようになる場合もあります。

しかし、所有権が後見人に移るわけではないので、不動産を売却しなければ介護施設に入居できないといった特別な事情がある場合や家族の判断などがあった場合などを除き、後見人が株や不動産を売却したり、不動産をリフォームするといったことはできません。

つまり、あらかじめ決めた方針に則って不動産などを運用してもらうことはできますが、認知症になった当人が他界するまで資産凍結の問題は解決できないのです。

「自分は大丈夫」「ボケない」と思っている人は多いかもしれません。

しかし、65歳以上の高齢者の7人に1人は認知症を患い、その割合は2025年には5人に1人になるという推計もあります(内閣府「平成29年版高齢社会白書」)。

ちなみにOECD(経済協力開発機構)によると、日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国35カ国の中で認知症患者の割合が最も多い国です。認知症が多い理由としては、他国と比べて衛生環境が良いことが一因といわれています。雑菌と触れる機会が少ないため、アレルギーや自己免疫疾患と同様に、アルツハイマーに対抗する免疫も衰えやすいということです。また、孤独感を感じている人や1人暮らしの高齢者が多いことも一因といわれており、日本人が生活環境の面で認知症を発症しやすく、決して縁遠い病気ではないと知っておく必要もあります。

日本における65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率 参考:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学二宮教授)より内閣府作成

効果的な相続対策ができる不動産を早めに探す

不動産を活用する相続対策に絞ると、認知症によって生じる問題は2つあります。

1つは、前述した資産凍結の問題です。

これは、すでに不動産を持っている人と、この先不動産を増やす予定がない人に考えてほしい問題です。

この問題を回避するためには、所有している不動産を整理した上で、誰に、どのように相続してもらうかあらかじめ計画し、伝えておく必要があります。

具体的には、遺言書による相続と、土地信託や家族信託などを利用して不動産などの管理を第三者に委託する方法が考えられます。

遺言書で資産の分配方法を指定しておけば、仮に認知症で判断能力がなくなった場合でも、死亡時に指定通りに相続が実行できます。すでに相続する人が決まっているのであれば、生前贈与(相続時精算課税制度)などの方法で贈与を済ませてしまうこともできます。

信託は、土地の所有権を一定期間の間だけ信託会社や親族などに移し、新たな所有者の管理や運用によって得た利益は受益者が受け取る仕組みです。

例えば、父親が所有する不動産を認知症になる前に息子に託し、息子がアパートを建てて経営、受益者である父親が家賃を受け取るといったケースが考えられます。

この仕組みを使うことにより、父親が認知症になっても不動産はきちんと収益を生むことができます。

2つめは、相続税対策の問題です。

この問題は、これから相続税対策として不動産を取得しようと考えている人、相続財産として預貯金や株などの金融資産が多い人、相続税が相続人の負担になる可能性がある人に考えてほしい問題です。

預貯金などの資産は不動産に持ち替えることによって資産評価の圧縮効果が見込めます。

税額が下がる理由としては、預貯金よりも不動産の方が資産としての評価額が低くなること、アパートなどの資産を第三者に賃貸することによってさらに評価額が下がることなど、税制面でさまざまなメリットが得られるからです。

ただし、やはり心身ともに健康な時に不動産を確保しなければなりません。

寝たきりになってからでは不動産を見に行くことができません。認知症になったあとでは売買契約が結べなくなってしまいます。

また、預貯金や株式などと比べて不動産は探したり購入するまでの時間と手間がかかります。基本的には長く運用するので慎重に選ぶ必要があり、専門知識も必要となります。

そのような性質を考えれば、不動産を用いる相続税対策は時間の余裕を持って取り組むことが必要で、不動産投資や相続の専門家に相談するなどしながら、できるだけ早く準備に取り掛かる必要があります。

「納税資金の確保」と「遺産分割のしやすさ」を考慮

最後に、不動産を相続する家族や親族がトラブルを抱えないようにするためのポイントを押さえておきましょう。

まず、相続資産の分配方法についてです。

遺産の金額や内容でトラブルとなることを「争族」と言われたりしますが、せっかくの遺産が争いの原因になっては困ります。

それを避けるためには、被相続人となる自分が先頭に立って相続について話し合う機会を設けたり、遺言を活用して意思を明確にしておくことが大事です。

次に相続税についてです。

資産の相続は関係者全ての人に発生しますが、相続税がかかるのは相続財産の価値が基礎控除額を超える場合のみです。

基礎控除額の計算式は、以下です。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除額は、相続人になれる法定相続人(配偶者と血族[子、孫、親])の数によって変わります。

例えば、自分が死亡した時に、妻、長男、長女が相続する場合、法定相続人は3人となるので「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」が基礎控除額となります。

相続財産が4,800万円以下であれば相続税は発生しません。つまり、相続税について準備する必要性がないということです。相続財産が4,800万円を上回った場合は、上回った分について相続税が発生します。

相続税が発生する場合は、相続人それぞれが、相続する財産に応じて納めます。

不動産の相続が多く、預貯金が少ない場合は注意が必要です。

というのも、相続税は現金納付が原則ですので、不動産を相続する人は相続税相当の預貯金を持っている必要があるからです。

預貯金が足りない場合は延納や物納が検討できますが、これらの方法で納税が難しければ不動産を売却したり、借金して納めることにもなりかねません。

相続準備の第一歩として相続財産の分配方法を話し合う際には、この点も踏まえた上で話し合うことが大事です。

相続税の負担が大きくなりすぎるようであれば、あらかじめ不動産を売却し、預貯金として相続できるようにするなどの方法も検討してみると良いでしょう。預貯金は不動産と比べて節税効果が低くなりますが、相続財産を分割しやすくなるというメリットがあります。

または、生命保険を活用して、相続税として納める現金を準備することもできます。

不動産として相続する場合は、税法上で様々な相続税の特例があります。

相続に向けた準備の第一歩として、まずは所有する不動産がどのような特例の対象となるか調べてみることをおすすめします。

また、相続の手続きは多くの人にとって不慣れなものです。遺言書の作成や生前贈与の検討といった点で専門知識が必要になる場合もあります。

不備なく相続を実行していくために、相続や不動産の相続に詳しい専門家に話を聞いてみると良いでしょう。

監修者紹介

三菱UFJ信託銀行:MUFG相続研究所 所長
小谷 亨一(こたに こういち)

経歴:
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士。
三菱UFJ信託銀行の営業店で資産運用・不動産・ローン・相続などの相談業務に従事。現在は、その経験を活かして資産運用や資産承継のセミナー講師として活躍の傍ら、TV・経済誌などメディアにも出演。

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