相続税・贈与税ガイド

7. 相続税の申告、納付、延納、物納、特例

申告期限

相続税の申告書は相続開始の日の翌日から10ヶ月以内に被相続人の住所地の税務署に提出します。相続税の申告は通常、相続人の連記の方法により1つの申告書で提出するのが一般的です。なお、遺産分割がまとまっていないケースでも、法定相続分で分割したとして、期限内に申告し、分割確定後4ヶ月以内に更正の請求あるいは修正申告することができます。

申告不要のケース

相続税の申告は、被相続人の正味財産(評価額)が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下のときは、必要ありません。なお、居住用の土地などで「小規模宅地の特例」による減額後に基礎控除以下になるケースでは、相続税額がゼロとなるときでも「小規模宅地の特例」が申告要件となるので、申告が必要になります。

納付期限

相続税の納付は、申告期限と同様で相続開始の日の翌日から10ヶ月以内です。

延納

相続人のぞれぞれの納付すべき相続税額が10万円を超え、かつ、金銭で納付することが困難な事由がある場合には延納できます。この場合、延納申請書を申告期限内に提出し、不動産や有価証券等の担保を提供します。なお、延納税額が50万円未満でかつ延納期間が3年以下のときは、担保提供は必要ありません。(注1)

相続税の延納期間・年率表(注2)

  • ※相続税の延納は年賦延納になり、年1回払いです。
延納の区分 延納期間/利子税
1. 原則 延納期間:5年以内
利子税:年6.0%(1.3%)
2. 不動産等(不動産、立木、事業用償却資産、同族株式)が相続財産の50%以上を占めるとき

不動産等の部分

延納期間:15年以内
利子税:年3.6%(0.7%)

その他の部分

延納期間:10年以内
利子税:年5.4%(1.1%)
3. 不動産等(不動産、立木、事業用償却資産、同族株式)が相続財産の75%以上を占めるとき

不動産等の部分

延納期間:20年以内
利子税:年3.6%(0.7%)

その他の部分

延納期間:10年以内
利子税:年5.4%(1.1%)
(注1)
延納申請をした場合には、途中で物納に変更はできない。一方、物納のケースでは、一定の期限内で延納に変更可能。
(注2)
利子税は原則、上表の年率となりますが、低金利時代を考慮して、下記の算式で計算した年率が適用になります。
利子税の割合(本則)×特例基準割合/年7.3%=特例割合(0.1%未満切り捨て)
なお、表中の利子税の( )内は特例基準割合が1.6%のケースです。

物納

相続税を金銭で納付できないときは、物納申請ができます。物納財産は国債、地方債、不動産、船舶、社債、株式、動産などです。
なお、物納したときは、その不動産の譲渡所得は非課税扱いとなっています。

  • ※管理上または処分する面で問題があるときは不動産等の物納がむずかしくなったり、他に変更させられる場合があります。

相続後の土地などを譲渡したときの特例

1. 相続税の申告期限後3年以内に土地や借地権などを売却した場合の譲渡所得税、住民税の特例

相続税の申告期限から3年以内に相続した土地や借地権を売却した場合には、次のような大きな特例を受けられ譲渡所得税、住民税が大幅に軽減できます。
土地を売却したとき、売却代金から取得費と譲渡費用が差し引けますが、この特例では、さらに支払うべき相続税額のうち、売却した土地に係わるものが差し引くことができます。

  • 計算例

    相続税の申告期限後3年以内に土地や借地権などを売却した場合の譲渡所得税、住民税の計算 相続税の申告期限後3年以内に土地や借地権などを売却した場合の譲渡所得税、住民税の計算
  • このケースでは、3年以内に売却すると4,654.17万円も税金が安くなります。

2. 相続により取得した空き家の譲渡に3,000万円控除の特例

親など(被相続人)が住んでいた空き家(昭和56年5月31日以前に建築された住宅で、マンションなど区分所有住宅を除くなど一定要件がある)または、その空き家除却後の敷地で、相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用でなかったものが対象です。平成28年4月1日から平成31年12月31日までの適用で譲渡金額が1億円以内となっています。また相続開始日以降3年を経過する年の12月31日までの間の譲渡に限られます。
※この特例を選択すると1の取得費控除の特例は適用できません。

物納財産の価額が相続税額を上回る場合、その差額は金銭で還付され、譲渡所得税、住民税も軽減されます。

相続税を物納した場合、相続税と物納財産の価額が全くイコールというケースは例外で、物納と一部現金納付の組み合わせが一般的といえます。
逆に、物納財産の価額が相続税額を超過するケースも出てきますがこのケースでは過納分は現金で還付されます。
ところで、物納は譲渡所得税、住民税が非課税になっていますが、これはあくまで相続税額までで、現金で還付を受けた過剰物納では、もどった金額に譲渡所得税、住民税がかかります。しかし、物納した土地などの所有期間が5年超のものについては税率が軽減され、2,000万円以下までは所得税10.21%、住民税4%、2,000万円超の部分については、所得税15.315%、住民税5%の税率になります。

計算例

物納財産の価額が相続税額を上回る場合の譲渡所得税、住民税の計算 物納財産の価額が相続税額を上回る場合の譲渡所得税、住民税の計算

このガイドについて

このガイドは平成30年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
平成25年分から所得税のほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されますが、計算の都合上これを除外している場合があります。
平成31年10月1日より消費税が10%にアップされる予定ですが、経済情勢などにより延期される可能性があります。
相続税・贈与税には複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士・弁護士など専門家にご相談ください。

執筆・監修 

税理士/中村 節弥

 

税理士/大田 貴広

編集・制作

/株式会社サンビー企画

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