相続税・贈与税ガイド

5. 相続税対策3つのポイント

相続対策には、相続税の節税、納税資金の確保、それにスムーズな遺産分割、この三つが大きなポイントになります。
「相続税対策だけをとって節税したけれど、スムーズに分割できない」とか、「納税資金を確保したけれど、節税対策をしていない」では、やはり問題があります。節税、資金確保、スムーズな分割と、この三つが三位一体となった相続対策をとることが最善といえます。このため、相続対策は十分に時間をかけて、税理士や弁護士などの専門家とよく打ち合わせて、実行してゆくことが大切でしょう。そこで、ここでは、相続対策のこの三つのポイントを念頭にいれた、いろいろなプランを例示しておきましょう。

1. 相続税の節税対策

相続税の節税対策を始めるには、まず現在の財産、債務をすべて明らかにする必要があります。
預貯金はいくらか、有価証券はどのくらいか、そして土地・建物の不動産はどこに何坪あるか、できれば一覧表を作成します。
これをもとにして、財産を評価して、現在の相続税を把握します。

生前贈与をフル活用

1. 現金、預金、有価証券の贈与

贈与税の年間の基礎控除110万円をフル活用して、長男、次男、長女それぞれ1人ではなく、その家族も含めて贈与していきます。
長男、その嫁、孫1、孫2、これで年間440万円が非課税で贈与できます。年間200万円ずつ800万円贈与しても36万円の贈与税で済みます。

2. 土地、建物の贈与

A土地は長男、B土地は次男、C土地は長女にと決めたら、たとえば長男一家4人に毎年、その土地の持分を贈与していきます。年間1坪ずつ4坪でも、将来を考えると大きいでしょう。建物はアパートや賃貸マンションなどの収益物件が有利といえます。

3. 配偶者へは住まいを贈与

婚姻期間20年以上の配偶者間では、住まい(土地・建物)を2,110万円まで贈与しても無税。住まいの土地部分を2,110万円の評価分まで持分移転するか、建物の一部も加えておくとよいでしょう。

4. 「住宅資金贈与特例」

親や祖父母などから20歳以上(所得2,000万円以下)の子や孫などへのマイホーム資金の贈与は一般住宅で700万円、高品質住宅は1,200万円まで非課税となります(10.贈与税の特例の活用法 参照)。また、平成31年10月1日より消費税が10%に引き上げられた場合には、平成31年4月1日から平成32年3月31日までの贈与額はそれぞれ2,500万円・3,000万円となります。

5. 「相続時精算課税」制度

60歳以上の親や祖父母など(一定のマイホーム資金に限り、平成33年12月31日まではこの年齢制限がありません)から20歳以上の子や孫などに、原則として贈与財産の種類およびその使い途が自由で、2,500万円まで贈与しても非課税となる制度(6.節税の知恵Q&A「1.生前贈与の知恵」および10.贈与税の特例の活用法「6.相続時精算課税制度の活用A」または「7.相続時精算課税制度の活用B」 参照)で、相続時に相続財産に加算され精算課税されます。
また、4の「住宅資金贈与特例」と併用することができます。

6. 「教育資金の一括贈与制度」

30歳未満の子や孫などに、教育資金を一括して1人に1,500万円まで贈与しても、平成25年4月1日~平成31年3月31日までの期間であれば贈与税は非課税となります(10.贈与税の特例の活用法「4.教育資金の一括贈与の非課税の特例」 参照)。

7. 「結婚・子育て資金の一括贈与制度」

平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、親や祖父母などから20歳以上50歳未満の子や孫などに結婚・子育て資金として1,000万円まで一括贈与した場合、通常非課税となる制度です(10.贈与税の特例の活用法「5.結婚・子育て資金一括贈与の非課税の特例」 参照)。

底地や遊休地を有効利用

1. 底地(貸宅地)の対策

借地人に貸している土地(底地)は、賃料と比較して固定資産税も高く、相続でもお手あげです。そこで、これにはいくつかの対策が考えられます。

  1. (イ)借地の一部と底地を交換して、お互いに所有権にかえます。いわゆる固定資産の交換特例を使って、土地を一部取り戻す方法です(交換差金の授受がなければ、譲渡所得税もかかりません)。そこで、ここにアパートなどを建築して有効活用をはかりながら相続税対策を立てるわけです。また、自用地にしておくと売りやすいので、将来の納税原資になります。
  2. (ロ)借地権を買い戻して、アパートなどを建設します。借入による相続税の軽減が期待できます。
  3. (ハ)底地を借地人に買い取ってもらい、将来の納税資金を確保する。
  4. (二)借地人と共同で賃貸マンションやアパートを建築する(等価交換も可)。

2. 遊休地の対策

今どき土地を遊ばせている人は少ないでしょう。それでもあまり収入のあがらない駐車場などで、当座をしのいでいる人も結構いるものです。
駐車場は確かに手間もかからず、また、売却するときにたいへん便利です。しかし、固定資産税が高く、また、相続時の評価も高いので、その面からも有利とはいえません。
アパートや定期借地権付住宅を計画してみるのもひとつの方法でしょう。

資産の転換を考える

資産の転換とは、金融資産を不動産にかえたり、土地を建物にかえることをいいます。

1. 金融資産で土地・建物を購入する

金融資産は時価評価ですが、土地の評価は約70%から80%ぐらいの評価という相続税法の評価を利用した節税です。また、建物は建築価額や購入価額ではなく、固定資産税評価額となります。建築価額などの60%前後で評価されるので、大幅な評価減となります。

2. 土地を建物に転換する

これは、いわゆる等価交換によるものや、土地を売却して、建物部分が大きいマンションに転換するなどが考えられます。
土地の評価は上昇しますが、建物の評価は下るというところがポイントです。

借入金を上手に利用する

「相続税の課税対象は、資産から債務を控除した正味財産である」という点をもう一度思い出してみてください。借金には相続税の節税効果がありますが、むやみに借りても意味がありません。借金して預金したとか借金して株を購入したのでは資産と債務のバランスが変わりません。借金して建物を取得するとか、土地を購入する、しかも、返済計画も健全という形がベストでしょう。

2. 納税資金の確保

相続税の納税資金をあらかじめ確保しておくことは、節税と同様に重要なことです。これはその人の財産状況によってさまざまでしょうから、ポイントをあげておきましょう。

団信生保付きローンに加入しておく

アパート建築や賃貸マンション購入などの借入れで、団体信用生命保険に加入していると、相続の際にローン残高と相殺されます。そこで、相続税は延納申請して、アパートやマンションの収入から相続税を払うことも考えられます。アパートやマンションを担保に“納税ローン”を借りる方法もあります。

生保の非課税枠の利用

生命保険金の非課税枠を利用して、納税原資に充てます。生命保険金は相続人1人当たり500万円まで非課税ですから、この特典を利用しましょう。
このほか不動産中心の人は、売りやすい物件を用意しておく方法もあります。

3. スムーズな分割

賃貸アパートは分割しやすくしておく

賃貸アパートにはいくつかのタイプがありますが、分割しやすくするには、タウンハウスタイプかメゾネットタイプがよいでしょう。タウンハウスやメゾネットは、連棟式になっているため、建物も分割できますし、それに伴って敷地も分割しやすい利点があります。

賃貸マンション、賃貸ビルなら区分所有で

賃貸マンションなどは、相続後、区分所有で分割できますので、やはり分割しやすいといえます。もちろん、最近のアパートも左右や上下など区分所有のできるものがあります。
また土地については、私道を設けるなどして、当初から分筆しておくことも必要です。このほか「遺産分割」の項で述べたように、共有、代償分割、換価分割も、その財産の状況によっては仕方のないことでしょう。

このガイドについて

このガイドは平成29年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
平成25年分から所得税のほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されますが、計算の都合上これを除外している場合があります。
平成31年10月1日より消費税が10%にアップされる予定ですが、経済情勢などにより延期される可能性があります。
相続税・贈与税には複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士・弁護士など専門家にご相談ください。

執筆・監修 税理士/中村 節弥

編集・制作/株式会社サンビー企画

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