相続税・贈与税ガイド

3. 相続税の計算方法

相続税の計算方法をご説明します。

相続税の計算

相続税の計算をするには、まず、被相続人名義の財産及び債務を確定しなければなりません。このため、土地、家屋の登記簿謄本や評価証明書、銀行等の預貯金の残高証明書(死亡日現在のもので、借入れがあればその残高証明も)、証券会社の有価証券等預り証明書、生命保険会社の計算書などを取り寄せる必要があります(税理士や弁護士に依頼することも可能)。
ついで、相続人を確定しますが、これには被相続人の戸籍謄本(改製原戸籍)や相続人の戸籍謄本及び住民票などが必要です。
これをもとにして、相続税は次のように計算します。

【ステップ1】正味財産

正味財産

【ステップ2】課税遺産額

課税遺産額

【ステップ3】相続税の計算

  1. (イ)課税遺産額を実際の取得分とは別に法定相続分で相続したものとして、それぞれ税率を掛けて各人の税額を算出し、それを合計する。
  2. (ロ)合計税額を各人の実際の相続の割合で按分する。
  3. (ハ)配偶者の税額軽減、未成年者控除などの税額控除をして各人の納付税額を算出する。

法定相続人の数

民法上、養子は実子と同じ相続分を持ちますが、相続税法のうえでは法定相続人の数の計算上、次のような制限が設けられています。

  1. (1)実子がいるケース・・・養子1人
  2. (2)実子がなく養子1人のケース・・・養子1人
  3. (3)実子がなく養子2人以上のケース・・・養子2人
  • ※特別養子縁組み(民法817条の2)による養子や被相続人の配偶者の実子で当該被相続人の養子となった者などは実子とみなします。

債務と葬式費用など

相続財産から差し引ける債務とは、死亡した人に係る借入金や未払金、公租公課などのほかに、保証債務や連帯債務のうち、確実に被相続人の負担が確定しているものも対象となります。

公租公課とは、被相続人の所得税、住民税のほか、土地建物に係る不動産取得税や固定資産税等をいい、その未納分が対象です。

葬式費用とは、葬式(葬送)に際し、埋葬、火葬、納骨等の費用、仮葬、本葬(通夜)などの費用をいい、相続財産から差し引くことが出来ます。香典返しの費用は香典が非課税になっているため認められません。
また、墓碑及び墓地の買入費や借入料も非課税財産のため香典返しの費用と同様、認められません。

相続税の速算表

計算のしかた(A)×(B)-(C)=相続税額

法定相続人の取得金額(A) 税率(B) 控除額(C)
1,000万円以下 10% 0
1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超 1億円以下 30% 700万円
1億円超 2億円以下 40% 1,700万円
2億円超 3億円以下 45% 2,700万円
3億円超 6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の計算例

1.遺産総額 5億円
2.債務・葬式費用 6,000万円
3.相続人 妻、長男、長女 計3人
4.分割 妻3/6、長男2/6、長女1/6(長男、長女は成人)

【ステップ1】正味財産

5億円-6,000万円=4億4,000万円

【ステップ2】課税遺産額

4億4,000万円-(3,000万円+600万円×3人)=3億9,200万円

【ステップ3】相続税の計算

(イ)相続税の総額:1億620万円

3億9,200万円×1/2=1億9,600万
1億9,600万円×0.40-1,700万円=6,140万円
長男 3億9,200万円×1/4=9,800万円
9,800万円×0.30-700万円=2,240万円
長女 3億9,200万円×1/4=9,800万円
9,800万円×0.30-700万円=2,240万円

(ロ)各人の税額

妻3/6 (按分率0.500) 、長男2/6 (按分率0.333) 、長女1/6 (按分率0.167)

  • ※按分率は合計1にする
1億620万円×3/6=5,310万円
長男 1億620万円×2/6=3,536.46万円
長女 1億620万円×1/6=1,773.54万円

(ハ)納付税額:5,310万円

配偶者の税額軽減
1億620万円×2億2,000万円(※)/4億4,000万円=5,310万円

  • ※正味財産の法定相続分(1/2)か1億6,000万円のいずれか高いほうに対応する税額を控除。ただし、実際に相続した価格に相当する税額を限度とします。

したがって妻の税額
5,310万円-5,310万円=0

長男 控除なし
3,536.46万円
長女 控除なし
1,773.54万円
納付税額の合計
5,310万円

1. 税額控除

税額控除とは、各人の算出税額から税額控除が受けられるもので、次の5つの控除があります。

1. 配偶者に対する相続税額の軽減

これは配偶者の算出税額から控除できるもので、次のいずれか高いほうの金額です。

  1. (イ)法定相続分に対応する相続税額
    • 子がいるときは1/2
    • 子がいなくて父母がいるときは2/3
    • 子も父母もいなくて兄弟姉妹がいるときは3/4
    • 子も父母も兄弟姉妹もすべていないときは1
  2. (ロ)1億6,000万円に対応する相続税額

つまり、配偶者の取得分が法定相続分と同じであれば、配偶者の納付税額はゼロ。また、正味財産が1億6,000万円以下のときは配偶者がすべて相続しても、相続税はゼロ。
なお、この税額控除は、申告期限までに遺産分割が行われていないと適用がありません。しかし、未分割でも申告期限から3年以内(相続の訴訟などやむを得ないケースでは、判決の確定等の日まで延長可)に分割されたときは、更正の請求によって還付を受けられます。

2. 未成年者控除

相続人が未成年者であるときは、次の算式の税額控除を受けられます。

10万円×(20歳-相続開始の日現在の年齢)

  • ※月数は切り捨て

また、相続人である未成年者の税額が、上記の控除額より少ないときは、その控除不足額は、他の相続人たる扶養義務者から控除できます。ただし、相続人である未成年者等が、すでに、この控除を受けているときは、受けた控除額は差し引かれます。なお、日本国籍のない相続人は、この控除を受けられません。

3. 障害者控除

相続人が障害者であるときは、次の算式の税額控除を受けられます

10万円(特別障害者は20万円)×(85歳-相続開始の日現在の年齢)

  • ※月数は切り捨て

税額の控除不足は2の未成年者控除と同様に、他の扶養義務者の税額から控除できます。また、すでにこの控除を受けているときは、その控除分は差し引いて計算します。なお、国内に住所がない相続人は障害者控除を受けられません。

4. 相次相続控除

相次相続控除とは、たとえば祖父の遺産を父が取得し(第1次相続)、祖父の死亡後10年以内に父が死亡して、その財産を子が取得したとき(第2次相続)に適用される税額控除です。つまり、父が負担した相続税の一部または全部を次の算式で控除できるものです。

相次相続控除

相次相続控除の計算式 相次相続控除の計算式
  1. (ア)第1次相続の相続税
  2. (イ)第2次相続の被相続人(父)が第1次相続(祖父)で取得した財産の価額
  3. (ウ)第2次相続で相続人全員が取得した財産の価額
  4. (エ)第2次相続で相次相続控除を受ける人の取得した価額
  5. (オ)第1次相続から第2次相続までの年数(1年未満の端数は切りすてる)

たとえば、祖父の遺産(1億円)を父が1人でちょうど5年前に相続し、今回の父の遺産が3億円として、この1/2を長男が取得したとすると、長男の相次相続控除は、

相次相続控除の計算 相次相続控除の計算

5. 贈与税額控除

相続財産を取得した人が相続開始前3年以内に贈与を受けている場合または、「相続時精算課税」制度を適用した場合には、その贈与財産は相続財産に加算して相続税を計算します。このため、加算された贈与財産は相続税の課税対象となり、贈与税との重複課税となりますので、その人の相続税を限度(「相続時精算課税」制度で贈与税を払っている場合には還付も可能)として、すでに支払った贈与税は控除できることになっています。
このほか海外財産を相続したときに、その国で相続税相当の税が課税されている場合は、それに相当する税額が控除できます。

2. 相続税の2割加算

相続や遺贈で財産を取得した人のなかで、被相続人の一親等の血族(親または子)及び配偶者以外の人がいるときには、その人の相続税は、通常の相続税の2割増しとなります。
たとえば、被相続人の兄弟姉妹や孫または配偶者以外の連れ合いなどがこの対象となります。しかし、孫でも子の代襲相続人であるときは一親等の血族とみなされ、また、養子、養親も一親等の法定血族となるので2割加算はされません。ただし被相続人の孫が養子のケースでは2割加算されます。

相続税の2割加算

このガイドについて

このガイドは平成30年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
平成25年分から所得税のほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されますが、計算の都合上これを除外している場合があります。
平成31年10月1日より消費税が10%にアップされる予定ですが、経済情勢などにより延期される可能性があります。
相続税・贈与税には複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士・弁護士など専門家にご相談ください。

執筆・監修 

税理士/中村 節弥

 

税理士/大田 貴広

編集・制作

/株式会社サンビー企画

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