プロが教える!あなたの相続対策

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第11回 不動産の活用で相続財産の評価額を下げる

公開日:2017/07/24

相続対策は、「節税対策」「分割対策」「納税資金対策」と、3つの視点から対策を考える必要がありますが、そのすべてに大きな影響を与えるのが不動産です。不動産を活用しながら相続対策を行うことができれば、税額を抑えながらもスムーズな資産の移転が可能になります。

相談者

相続税の節税について悩んでいる男性

数ヵ月前に父が亡くなったのですが、そのときに相続税額の大きさに驚きました。いずれ私から息子に相続するときもおそらく相続税の課税対象になるはずです。相続税額を少しでも抑えるために、なにかよい方法はないでしょうか。

  • 相談者:72歳 男性
  • 法定相続人:妻・長男
  • 家族構成:妻(長男は結婚して独立している)
  • 相続財産:現預金4,500万円、自宅2,200万円(相続税評価額)
今回のポイント
  • 資産の一部を現預金から不動産に組み替えることは、相続税評価額を大きく下げられるという意味で有効な相続対策といえます。
  • 購入した不動産を活用して賃貸経営を行えば、相続税評価額をさらに下げる効果があり、賃料収入を得ることができます。

相続全体の8.0%が相続税の課税対象者に

相談者

父から相続を受けたときに、相続税額の大きさに驚きました。いずれ私から息子へ相続する際にもやはり相続税はかかるのでしょうか。

玉置千裕
家系図

2015年1月に相続税が改正になり、基礎控除額がこれまでの「5,000万円 + 法定相続人の数×1,000万円」から「3,000万円+法定相続人の数×600万円」へと大幅縮小になりました。

国税庁の発表によれば、2015年の被相続人数(亡くなられた方)は約129万人となっています。このうち相続税の課税対象となった方は約10万3,000人で、課税割合は全体の8.0%に及びます。前年の2014年に課税対象となった方が約5万6,000人で、課税割合が全体の4.4%であったことを考えると課税対象がかなり広がっていることがお分かりいただけるのではないかと思います。

ご相談者様の場合、法定相続人が奥さまと息子さまのおふたりですから、基礎控除額は4,200万円です。将来の状況にもよりますが、相続税が課税される可能性は高いといえます。

資産の一部を不動産に組み替える

相談者

できるだけ税額を抑えたいと思っているのですが、何かよい方法はないでしょうか。

玉置千裕

これまでの事例でもご紹介してきたように、相続財産の評価額を下げる方法は実にいろいろあります。なかでも大きく評価額を下げたいのであれば、不動産の有効活用が考えられます。資産の一部を現預金から不動産に組み替えることで、相続財産の評価を大きく下げることが可能になります。

不動産、なかでも土地は“一物四価”と呼ばれます。これは、一つの土地に対して「実勢価格」「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」の4つの異なる価格が存在する、という意味です。相続税評価額の計算において、土地は「路線価」で評価されます。路線価は一般的に、取引価格の相場である実勢価格の約70~80%と言われています。つまり、手元の現預金を使って土地を購入することで、相続税評価額を20~30%圧縮することができる、ということになります。

また、建物については、固定資産税評価額に基づいて計算されます。固定資産税評価額は総務省が定めている固定資産評価基準に基づいて計算され、築年数等にもよりますが、建築費のおよそ60~70%程度となるのが一般的です。つまり、建物を建てることで、現預金として資産を持っている場合と比べて約30~40%、相続税評価額を圧縮することができる、というわけです。

不動産は”一物四価

賃貸経営で生活にゆとりを

相談者

なるほど、そうなのですね。とはいっても、すでに自宅もあるので、節税のためだけに不動産を購入するというのもなんだかピンと来ないのですが…。

玉置千裕

おっしゃる通りです。そこで選択肢のひとつとして挙げられるのが賃貸経営です。購入した土地や建物を第三者に賃貸することで、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として評価され、自用の場合と比べて相続税評価額をさらに20~30%ほど圧縮することができます。

それだけではありません。当然のことですが、借り手がつけば、そこから毎月、家賃収入を得ることができます。こうした家賃収入によって毎月の生活費を補ったり、あるいはご夫婦で趣味や旅行を楽しまれたりといった形で活用すれば、これからの生活にもさらにゆとりが生まれるのではないでしょうか。

ただし、こうしたことが実現できるのも借り手がついてこそ。賃貸アパートや区分マンションを購入したのはよいけれど一向に借り手がつかず、維持費ばかりがかさんでしまうというのでは本末転倒です。また空室が長期間続いてしまうと、賃貸物件とみなされず、「貸家建付地」や「貸家」としての評価減が受けられない場合もあります。安定した賃貸経営を行うためにも、購入の際には安心できる専門家に相談に乗ってもらうのがよいでしょう。

不動産の評価方法

賃貸物件を生前贈与する

相談者

反対に、賃貸経営がうまくいくことで相続財産が増えてしまうといったことはないのでしょうか。

玉置千裕

嬉しい悩みですね。実は、こういった状況を避けるための方法があります。相続を待たずして息子さんに賃貸物件を生前贈与する、という方法です。

相続時精算課税制度」を活用して賃貸物件を生前贈与する場合、土地は路線価、建物は固定資産税評価額に基づき、利用状況に応じて評価額を計算することになっています。評価額が2,500万円以下であれば、贈与税がかからずに生前贈与を行うことができます。現預金での贈与に比べると、税負担が少ない状態で贈与が可能になるわけです。(なお、不動産の生前贈与の場合は、不動産取得税や登録免許税などがかかります。)

また、「相続時精算課税制度」は、相続が発生したときに生前贈与をした財産も含めて相続税を計算します。よって生前贈与自体は相続税の軽減にはつながりませんが、賃貸物件を生前贈与することにより、贈与後にその賃貸物件から得られる賃貸収入は、所有者である息子さまのものになります。ですから、賃貸経営がうまくいくことで相続財産がかえって増えてしまうという心配は不要になります。息子さまの資産形成も加速化するでしょうし、得られた賃貸収入を将来、相続が発生した際の納税資金の準備に充てることもできます。

このように、不動産を活用しながら相続対策を行うことができれば、税額を抑えるだけでなく、スムーズな資産の移転も可能になります。ぜひ幅広い選択肢から相続対策を考えてみてはいかがでしょうか。

次回は、金銭信託によって計画的に財産移転を実現する方法についてご紹介します。

賃貸物件の生前贈与の仕組み

回答者紹介

  • 玉置千裕
    執筆・監修:
    三菱UFJ信託銀行玉置 千裕(たまき かずひろ)
    経歴:
    1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士。
    三菱UFJ信託銀行の営業店で資産運用・不動産・ローン・相続などの相談業務に従事。現在は、その経験を活かして新聞・雑誌などでも活動している。
本コンテンツの内容について
公開日時点の法令に基づき、相続の基本的な仕組みを説明しています。個別の事例によっては、所定の要件を欠く場合がありますので、専門家にご確認ください。

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