プロが教える!あなたの相続対策

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第1回 相続税の改正で課税対象となるケースが急増

公開日:2016/09/23

2015年1月から相続税が改正になり、これまで相続税とは無縁と思っていた方でも、新たに税を負担しなければならないケースが増えています。今回は、相続税の基本的な仕組みについてご紹介します。

相談者

親世代、子世代、孫世代からなるファミリー

最近、相続を経験した知人から、「相続は大変だから、しっかり知識をつけておいたほうがいいよ」とアドバイスされました。
妻と子ども2人がいますが、実際に相続が起こったら誰がいくら相続することになるのでしょうか。

  • 相談者:夫 68歳 男性 無職
  • 法定相続人:妻・長女・長男
  • 家族構成:自宅に長女家族と同居
  • 相続財産:自宅(東京都世田谷区)、現金4,500万円
今回のポイント
  • 相続税の改正によってこれまでは相続税の課税対象ではなかったケースでも新たに課税対象となるケースが急増しています。
  • 相続対策は「節税対策」「分割対策」「納税資金対策」の3つの観点から考えることが必要です。

相続税とは、「財産を相続したとき」にかかる税金

相談者

そもそも、相続税とはどのような税金なのでしょうか。相続税の基本的な仕組みについて教えてください。

玉置千裕

人が亡くなると、その人が持っていた財産は、夫や妻、子どもや兄弟などに移転することになります。この財産の移転に対して課税される税金が「相続税」です。

人が亡くなったとき、財産を相続することになる人は「法定相続人」と呼ばれ、誰が法定相続人となるのかは民法によって定められています。また、同じ法定相続人の中でも関係性によって優先順位や相続割合が異なってきます。

今回のケースは、奥さまとおふたりのお子さまがいらっしゃるとのこと。この場合には、奥さまが2分の1、お子さまおふたりがそれぞれ4分の1ずつを相続することになります。配偶者も子どももいない場合には、直系尊属と呼ばれる両親や祖父母が相続することになります。

相続における遺言書の存在

相談者

なるほど。つまり、誰にどれだけ相続するかの割合は、法律によって決められているということなのですね。

玉置千裕
法定相続人の法定相続分と遺留分

このようにあらかじめ民法で決められている相続の割合を、「法定相続分」と呼びます。しかし、実際には「自宅は長男に継いでほしい」「介護をしてくれた長女に多めに財産を遺したい」など、状況によって様々な希望があるかもしれません。

そうした場合に効力を発揮するのが「遺言書」です。詳しくは別の機会に説明しますが、法定の要件を満たした遺言書であれば、そこに書かれていた内容については、民法で定められた相続の割合よりも優先されることになっています。

ただし、だからといって遺言書に「私が亡くなったら、全財産を知人に贈与します」「介護をしてくれた長男の妻に全財産を相続したい」といった内容が書かれていたとしたら、いくら故人が生前お世話になった人だったとしても「ちょっと待って!」と言いたくなりますよね。そんな極端な状況になることを防ぐために、遺言書にどんな内容が書かれていたとしても、法定相続人が最低でも一定の割合を相続できるように保証されています。これが「遺留分」と呼ばれるものです。

遺留分は、法定相続人が親などの直系尊属だけなら財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1というのが原則です(兄弟姉妹には遺留分はありません)。ですから、奥さまとおふたりのお子さまが法定相続人である今回のケースでは、財産全体の2分の1が遺留分ということになります。奥さまが2分の1、お子さまおふたりがそれぞれ4分の1というのがもともとの相続割合ですから、その2分の1で、奥さまが4分の1、お子さまおふたりがそれぞれ8分の1というのが実際の遺留分ということになります。 ただし、この場合の財産には、相続財産のほか、生前贈与財産(原則、相続開始時1年以内のもの)なども含まれるなど、計算はやや複雑です。ご自身のケースではどうなるのかを知りたい場合は、専門家にご相談されることをおすすめします。

相続税の改正によって何が変わったのか

相談者

2015年1月に相続税が改正になり、新たに課税対象となるケースが増えていると聞きました。我が家の場合はどうなのだろうと気になっています。

玉置千裕

相続税は、すべての相続に対して課税されるわけではありません。原則として、相続財産の総額が基礎控除額を超えた場合に課税されることになります。

この基礎控除額が、2015年1月の改正によって大幅に縮小になりました。これまでの基礎控除は「5,000万円 + 1,000万円×法定相続人の数」となっていました。つまり、法定相続人が3人の場合、8,000万円を超える財産がある場合に相続税がかかることになっていました。しかし、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。

今回のケースは、3,000万円+600万円×3人で、相続財産の総額が4,800万円を超えると相続税の課税対象となる可能性が出てくるということ。現金を4,500万円お持ちで、世田谷区にご自宅があるということですから、相続税の課税対象になる可能性が大きいといえるでしょう。

なお、基礎控除の縮小とともに、税率の構造が変更になり、最高税率も50%から55%へと引き上げになっています。取得金額が2億円以下の方にとっては影響ありませんが、2億円超となる方については、これまでより税率が高くなる場合があります。

基礎控除額改正のポイント

相続対策に必要な3つの観点

相談者

基礎控除が縮小になったということは、これまでよりも課税対象になるケースが増えたということですね。

玉置千裕

その通りです。特に、都心部で土地付き一戸建てを所有している場合、新たに相続税の課税対象になるケースが急増しているとも言われています。いまのうちからしっかりと相続対策をしておくことが望ましいといえるでしょう。

相続対策に必要な観点は3つあります。それが、相続の税額を減らすための「節税対策」、相続をきっかけに揉めごとが起こらないようにするための「分割対策」、そして納税に備えた「納税資金対策」です。

相続は俗に「争続」とも言われます。それまで円満だった親子・兄弟関係が、相続によって崩れていく・・・そんなケースはあとを絶ちません。ですから、相続税を減らすための「節税対策」に加えて、法定相続人の間で揉め事が起こらないように、専門家に相談しながら遺言書を書いたり、財産を分割しやすいように工夫しておく「分割対策」も重要なポイントといえます。

また、相続税は現金で一括納付するのが原則ですから、「納税資金対策」も忘れてはなりません。相続税を納められるだけの現金が準備できないばかりに、相続人が長年住み慣れた自宅を手放さなければならないといったことにならないようにしたいものです。 相続について知らないままでいると、大きなトラブルを招いてしまう可能性は少なくありません。しかし、あらかじめこれら3つの「対策」を講じておけば、トラブルを避けられるだけでなく、財産を次の世代に円滑に受け渡し、活用してもらうことができます。具体的な対策については、今後詳しく解説をしていきます。

次回は、相続を「争続」にしないための遺言書の書き方について、ポイントをご紹介します。

回答者紹介

  • 玉置千裕
    執筆・監修:
    三菱UFJ信託銀行玉置 千裕(たまき かずひろ)
    経歴:
    1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士。
    三菱UFJ信託銀行の営業店で資産運用・不動産・ローン・相続などの相談業務に従事。現在は、その経験を活かして新聞・雑誌などでも活動している。
本コンテンツの内容について
公開日時点の法令に基づき、相続の基本的な仕組みを説明しています。個別の事例によっては、所定の要件を欠く場合がありますので、専門家にご確認ください。

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